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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
8 「ふりそそぐ空」
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けた、最高の芸術作品。凍土はしょっちゅう雪やら雨やらが降るから苦手なんだが、今日ほどこの気候に感謝した日は無いよ!

「なんて……」

 なんて、美しい。

 ボクはただ絶句していた。言葉が出ない。なんて美しい殺戮の痕(・・・・)なんだ!! 氷点下になるこの凍土、1週間前の状態そのままに残されていたのだ! 幸運にも、小型竜につつかれることなく、完全な形で!
 ああ、僕に絵の才能があったなら! うっすら積もった白い氷原と、悠然とそびえる青灰の氷壁。その間に閉眼する青紫の飛竜と、赤い血。このコントラストはまるで、真っ白い百合の花の中一輪咲き誇る真紅の薔薇のようだ!
 ふらふらと吸い寄せられるように毒怪竜の死体のもとへ歩む。驚くのはそれだけではなかった。

「美しい……!!」

 こんなに美しい竜の死体は、そうはお目にかかれない。表皮の分泌をやめたギギネブラの薄鈍(うすにび)色の肌は僅かな傷もついていない―――ただ一点、心臓の位置。縦6p横1p未満の小さな刺突の痕以外は。そこからは赤い血がまるで今の今まで流れ出ていたかのようにリアルな色で固まっている。風向きの関係か、崖にほど近いこの竜の躰にはほとんど雪が降りかかっていない。お蔭でここまで完璧な保存状態のまま一週間が過ぎていたのだろうが……

「これは……本当に、バークリー氏以外の者が、これを……?」

 俄かには信じられない。尾部にももう一か所刺突の痕があるが……確かに、明らかにこれはボクの知るバークリー氏の得物とは形が違い過ぎる。平たい斬属性―――これは明確に剣の特性を表している。それも、竜の皮膚にこれほどまで深く鮮やかに傷をつけられるんだ、双剣や片手剣とは違う柄の長い、薙刀や太刀が当てはまるだろう。……ボクの尊敬するバークリー氏の得物は槍。こんなの、ボクでないハンター候補生ですらわかるような特徴差だ。
 戦慄を隠せない。
 まさか、(バークリー氏)以外にもこんなに美しい(・・・)一撃を極めた者がいるなんて!

「これをやったハンターの名前は……?」

 三つ折りにされた書類を取り落しそうにながらも何度も何度も確認する。
 四ツ星クエスト、クエスト名『毒怪竜ギギネブラを追え!』。報告内容、下位認定クエストであるにも関わらず、同フィールド内にて毒怪竜ギギネブラの4頭同時狩猟を強いられた、と。受注ハンター名は『HR2 ミギワ・テンマ』、『HR2 ミサキ・テンマ』、まだ14歳の子供たち。その若さで考えれば、HR2というのはなかなか優秀な逸材だ。それから、医師免許(ライセンス)取得の上の付き添いだったという『アヤメ・モチヅキ』医師。そして、『HR2 ナギ・カームゲイル』、22歳。
 4人の名前の下にはそれぞれ過去に受けてきたクエストの詳細やらギルド登録の時期や
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