8 「ふりそそぐ空」
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気づいていても、きっとこの方のことです、清々しいほどに無視してらっしゃるのでしょう……。ああ、胃が…。
私の憂鬱を嘲笑うかの如く降り注ぐ採光窓からの温かい日差しに、やっぱり視界がぼやけて……いえ、何でもありません……ええ、気のせいですよ、きっと…。
「漆黒の…それはまことか……!?」
「……噂話にすぎませんが、火のない所に煙は立たぬとも申しますし、一度お探しになるのも御一興かと…」
「見たい! 見たいぞ!! よし、早速調査を始めよう。まずはそれが本当なのか法螺なのかじゃ。レベッカ、急ぎフェデリコを連れてまいれ!」
ああ、ベルターニャ将軍……ごめんなさい……。
私と同じ、いや、それ以上の実害を被っている年若い将軍に内心で届きもしない謝罪をして、私は踵を返しました。……その前に胃薬を飲んでおこうっと…。
***
Scene3.【墓前、凍てつく蒼白の大地にて、金の輝きを纏う狩人は、この日】
***
―――ガチャ...ガチャ...ガチャ...
竜の墓場、凍れる大地。
ほんの一週間前この地で行われた激闘の痕も、あと数日とせぬうちに全て消え失せるだろう。無垢な新雪が、すべてを覆って。
……。
……フ、フフフ。なかなか詩的な表現じゃないか。よし、これは台帳にメモしておくに値する散文だ。何か取材の時にでも使えるかもしれない。まだ実際に痕跡を見たわけじゃないから、何とも言えないけれどもね!
―――ガチャ...ガチャ...ガチャ...
脅威は消えたとはいえ、いまだこの凍土は一般人に開放されていない。この地から採れる薬草などを生計に立てている市民たちにとっては死活問題だろう。そう思うとボクは……ああ、胸が張り裂けそうだ!
だが今日、ボクが! このボクが直々にここへ足を運び安全を確かめる! 待っていてくれたまえ、怯え震えるグプタ町のお嬢さん達! ボクが来ればもう安心さ、君の心に差す影を払う、一条の光となってボクは―――!
「……ふむ、流石に恰好つけすぎかな、これは。もっと、こう……華麗に、爽やかに! をコンセプトに……」
よし、ボツ。
革張りの手帳を手に、ぶつぶつと独り言をつぶやきながら歩くボク。町の中では中々ゆっくり一人になる時間は少ないからね。光栄なことだけれど、時には閑静な場所でしっかりと英気を養っておかないと。うん? 何か今、君、変な読み方をしなかったかい? 不審な勘繰りはやめたまえよ。このボクの真っ直ぐな瞳を見ても、まだボクを疑うというのかい!? ほら、ボク自慢の碧眼さ! ご覧、星が瞬いているだろう? これが何よりの証拠だ。邪な心を持つ人間の瞳には、星は降りてこな
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