第二章
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「お客様へのコーヒーの出し方ですよ」
「そんなものがあるのか」
「そうですよ。御存知なかったんですか?」
「どうぞとかそういうものか」
「そうですよ。こうやるんですよ」
文子から蜜柑水を受け取った。そしてそれを客の一人にそっと出す。
「どうぞ」
出しながらにこりと笑う。気品のあるとてもいい笑顔であった。
「笑いながらどうぞ、だな」
「はい」
千賀子は答えた。
「おわかりになりました?」
「わかった。それでは」
「おっさん、コーヒー一杯」
「うむ」
「だから違いますって」
そこはうむ、ではなかった。はい、か毎度、であった。だが生粋の軍人である彼には中々わからないことであったのだ。喫茶店のマスターになるにはかなりの苦労が必要であった。彼以上にその側にいる千賀子の苦労がである。
それから一年が経った。店はそれなりに売り上げがよく品々もよくなっていた。コーヒーも進駐軍の絞りカスから何とか普通の豆になろうとしていた。北条のマスターぶりもかなりよくなり、かなり慣れてはきていた。
蓄えもできていた。だが北条の心は晴れることが少なかった。
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