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万華鏡
第七十五話 大雪の後でその十四
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「わかったわね」
「何かいよいよね」
 副部長が部長の隣で一輪車を前にひきながら言った。その一輪車の上には雪が山盛りである。
「またライブね」
「そう、まただから」
「だからなのね」
「練習はいつも通りリラックスしてやっていくわよ」
「リラックスね」
「力張っていたら硬くなるから」
 それでだというのだ。
「失敗するからね」
「まああんたはリラックスし過ぎだけれどね」
「それ位がいいのよ」
 部長は副部長の注意は笑って軽くかわした。
「かえってね」
「相変わらず応えないわね」
「歳の離れた兄貴がいるとそうなるのよ」
「それは関係ないでしょ」
「あるの、それが」
「どうしてなの?」
「私と兄貴十五離れてるからね」
 それで、とだ。部長は笑って話すのだった。
「当然結婚して奥さんいて」
「所謂兄嫁ね」
「そうそう、それで子供が出来て」
「じゃああんた叔母さんなの」
「十歳でそうなったのよ」
「それはまた複雑ね」
「甥っ子が冗談で叔母ちゃんって言ってきても軽くかわさないとね」
 それで、とだ。部長は笑って話していく。
「十七で叔母ちゃんよ。義姉さんは流石に甥っ子にお姉さんって呼びなさいって言ってるけれど」
「よく出来たお義姉さんね」
「あの兄貴には勿体ない位いい人よ。結構百合っ気あるけれどね」
「その百合っ気は問題でしょ」
「私が対象じゃないからいいの、義姉さんモデル好きだから」
 小柄な部長ではないというのだ、その義姉の趣味は。
「背の高いね」
「あんた小さいからね」
「一五〇センチね」
「紛れもなく小柄ね」
 その背ではとだ、部長は笑って言う。
「甥っ子男の子だから将来絶対に抜かれるわ」
「お兄さんとお義姉さん背どれ位なの?」
「兄貴一八〇、義姉さん一六七よ」
「高いわね」
 その兄嫁にしても、というのだ。
「それなら多分甥っ子君も高くなるわよ」
「私はお母さんに似て小さいのよ」
 そちらの遺伝だというのだ。
「幸いね」
「あんた小柄でいいっていうわね、いつも」
「小柄萌えってあるからね」
「それでいいのね」
「小さいと頭ぶつけなくてもいいから」
 このこともあって、というのだ。
「私はこれでいいのよ」
「小柄なままで」
「そう、高くなくてもいいの」
「そこで背が欲しいと言わないのは特別ね」
「そんなのどうでもいいのよ」
 部長にとっては、というのだ。
「そういうことでね」
「いつも聞いてるけれどわかったわ」
「そうでしょ、じゃあね」
 こうした話をしてだ、そしてだった。
 そうした話をしてだった、女子軽音楽部は部活に入った。この日は雪かきを楽しくやって過ごしたのだった。


第七十五話   完


          
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