第七十五話 大雪の後でその七
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「どうにもね」
「だから昨日も」
「そう、嫌だったのよ」
どうにも、というのだ。
「出られなかったしね」
「うん、一日中ね」
「雪かきはしたけれどね」
「その他はね」
「寮から出られなくて」
「一日寮にいるのもね」
その寮生同士の話である、八条学園は寮もあるがその寮にいる人間にしかわからないことを話しているのだ。
「ちょっとね」
「退屈よね」
「先輩とか寮の先生の目もあるしね」
「ハメも外せないし」
このこともあって、というのだ。
「寮に一日はね」
「辛かったわね」
「うん、もう二度とね」
「勘弁して欲しいわね」
「あの、いいですか?」
琴乃はその話をする二人の先輩に声をかけた。
「寮ってそんなに大変だったんですか」
「何ていうかね」
「外に出られないから」
だからだというのだ。
「どうしてもね」
「退屈だったのよ」
「それで先輩の人達もいて」
「その目もあるからね」
「気が抜けなくてね」
「どうにも」
こう琴乃に話すのだった。
「一日寮にいるとね」
「あまり疲れが取れなくて」
「学校にいる方が気が休まるところがあるのよ」
「むしろね」
「そうなんですね」
「そう、結構ね」
「そうしたところがあるから」
琴乃に対して話している言葉である。
「寮にいると寝るまで気が休まらないわよ」
「そうしたところがあるのよ」
「そう、ですか」
琴乃もその話を聞いて頷いたのだった。
「寮はそうした場所なんですね」
「寮の先生達の目もあって」
「いつもちゃんとね」
「そうしておく場所よ」
「自衛隊程じゃないけれど」
「流石に江田島まではいかないですね」
夏の合宿で行ったあの島だ。海上自衛隊幹部候補生学校かつての海軍兵学校がある広島の島である。
「やっぱり」
「あそこはまた特別でしょ」
「刑務所じゃないから」
先輩達も流石に、という口調だった。
「あそこは通称赤煉瓦の監獄だったでしょ」
「寮も刑務所じゃないから」
「ハメを外せないだけでね」
「あんな規則規則のところじゃないわよ」
「鉄拳制裁もないですか」
兵学校名物である、これもまた。
「それも」
「ないない、体罰厳禁よ」
「男子寮の方でもね」
「そういうのはね」
「全然ないから」
「そうですか、ならいいです」
琴乃も体罰がないと聞いてほっとした顔になって答えた。
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