高校2年
第四十九話 二人乗り
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居るのは、知花俊樹その人だった。
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「俺に聞きたい事って何とよ?インタビューの答え方か?愛想笑いの仕方か?それともメアドの聞き方か?何でも聞くがええよ」
知花は鷹揚な態度で翼に相対した。
葵がすかさず「本当しょうもない事しか知らんのやけんなぁ」と突っ込みを入れるが、翼はニコリとも笑わずに、ポケットから硬式球を取り出した。
「スクリュー。」
「えっ?」
「君、スクリュー投げてただろ?」
翼は知花に対して頭を深々と下げた。
「お願いだ。投げ方を教えて欲しい。」
「ええっ?」
実直な態度で頼んだ翼に知花は戸惑うが、しかしため息を一つつくと、頭をポリポリとかきながら苦笑いを見せた。
「そんなに開き直って頼まれちゃぁな。教えん訳にはいかんやろーな。」
知花は家の中に引っ込む。背中越しに翼に言った。
「近所の小学校のグランドに行っとってくれ。グラブ持っていくけん。」
「ありがとう!」
翼は知花の背中に向かってもう一度頭を下げた。
知花は「ええけ、早う行けや」と、生真面目な翼に手をヒラヒラと振ってみせた。
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「はい、それじゃあ、水面と斧頃をつなぐ歴史的技術交流を始めたいと思いまーす」
知花がおどけるが、翼も葵も特に反応を示さず、両者の間に冷たい風が吹き抜けた。
知花と翼はグラブを持って、知花の家の近くの小学校のグランドに来ていた。知花の変化球講座の始まりである。
「で、最初に言っとくけど、俺はスクリューなんて全く投げれんけんな」
「えぇ!?話が違うよ!」
「そもそも、俺は三龍との試合でスクリューなんて一球たりとも投げとらんけん。別にお前、スクリューに拘ってる訳やないやろ?要するに一塁側に落ちてく球が投げたいんやないんか?」
知花の言う事はもっともである。
翼は知花の投げていたあの球が欲しい訳であって、別にスクリューを投げなくてはならない理由はない。ただ、これまで知花の投げていた球をスクリューだと思って練習してきたのに、翼としてはこれまでの練習での投げ込みが一気にバカらしく思えてしまった。
「俺が投げてたんはこれ。サークルチェンジ。こうやって握るんや。ほれ、やってみ。」
知花が見せたボールの握りは、人差し指と親指で円をつくり、まるで鷲掴みのように全ての指を添えたものだった。
翼も同じ握りを作ってみる。スクリューの握りよりかは、指の間から抜けるイメージが作りやすい。
「この握りでな、手首をあんまりしならせんように立てて使うんよ。小指の方から球を抜く感じで。腕はしっかり振るんやぞ。」
そう言って知花はグラブを構えた。
投げてこい、という事らしい。
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