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【短編集】現実だってファンタジー
俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 前編
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は別として、最近こういうやり取りが板についてきたような気がする。その事実に、俺の心は微かに焦るのだ。自分の認識が少しずつ塗りつぶされているようで、怖いのだ。


 = =


これは仮定の話であり、事実とは異なるものも多く含まれるだろう。だが仮定には考える事にこそ意味があり、可能性の模索の為には真実に到達するうえで非常に重要なファクターである。故にこれから行う仮定という名の推論にはその全てに意味があるとも言え、無いとも言える。早い話、合ってるかどうかはこの際度外視するという意味だ。

「ねぇね、美味しい?」
「うめー!やっぱり志枝の作った弁当は最高だぜ!」
「はは、作った甲斐があったよ」

む、今日もあいつらはいちゃついているな。クラスメートの立花と大良だ。弁当をがつがつ食っている日焼け気味の「女」が大良和希(おおらかずき)で、弁当提供者の「男」が立花志枝(たちばなしえ)である。・・・念の為に言うと、名前を取り違えはしていない。マジで女が和希、男が志枝なのだ。あいつらの両親は名前の付け方を間違えている気がしないでもない。
とても仲のいいカップルなのだが、立花は男のくせにやたら思考が女よりで、逆に大良は言動がほぼ男。クラス内では「TSカップル」等と陰で呼ばれている。

俺はいりこにあんなに親身に接する気にはなれない。もう入学数か月が経過したせいで腐れ縁の友達としては受け入れ切れているが、奴が俺の幼馴染を自称する点において俺はそれを見過ごせない。というか、俺はいりこという人物は大して怖くない。本当の事を言うと自分がおかしいのではないかというのが怖いのだ。
世界中で俺だけの認識が狂っているなんて、冗談じゃない。

例えばそこに10人の人間がいたとする。その10人にシルエットクイズを出してこれが何に見えるか聞いたとしよう。映ってたのが鳥ならば10人は鳥だと答えるだろう。
だがその中に鳥を見たことが無い奴がいたならば、そいつは分からないというかもしれない。鳥に詳しい人間ならばその鳥が何という名前の鳥かまで考えるかもしれない。或いはシルエットは黒いから(からす)だなんて言い張るやつもいるかもしれない。

だがここで、鳥を見たことがあるにもかかわらずそれをモナリザだ、オーストラリア大陸だ、チュパカブラだなどと言い出す奴がいたら、それは明らかにおかしい。似ても似つかないからだ。もしもその人間が嘘をついていないんだとしたら、彼にとってそれは鳥でないと認識しているのだ。10人の中で彼にだけ別の世界が見えているのだ。
そして9人が鳥だと言い、1人が鳥ではないと言った場合、健常で正常な思考を持った人間ならば「ならばそれは鳥だ」と言うだろう。単純な多数決であり、残りの一人は精神異常者かひょうきんものだと思っているのだ。

しかし、もし
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