俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 前編
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の知らないことを周りが当たり前だと思っている現状の、異常性を。それまでの人生で認識していなかったのに突然日常に浮上してきたいりこという存在の非現実性を観測していない。
俺の記憶違いかもしれないと考えなおしても―――やはり、覚えていないのだ。俺はこんな女の子は知らない。俺の知らない事実が、俺の認識の外から滑り込んできて当然のように居座っている。人の記憶はあやふやなものだとは言うが、明らかに度が過ぎていた。あいつは、誰だ。田楽いりこという固有名を聞きたいのではない、もっと根源的な違いがあるように思えた。
そう周囲に漏らしても、皆笑いながら「また喧嘩したのか」と言うのだ。正直良いとも悪いとも言えない程度の魅力しか持ち合わせない俺に釣り合う女には思えないのだが、周囲は面白いくらいに気にしていない・・・いや、こちらはちっとも面白くないのだが。
推測するところ、俺はいりこ相手に結構ぶっきらぼうな態度で接することが多かったらしく、「あんな奴は知らん」などと口癖のように言って存在を忘れたふりをしていたようだ。おのれ皆の記憶の中の俺め、ややこしい事をしおって。・・・んん?俺の記憶の中にいる俺は、俺と同一の存在なのか?それとも俺の想う俺と俺の知覚する俺は俺という定義から外れた俺であってつまりそれは―――
「さざめ君」
「あん?」
思考の最中にいりこに呼ばれてそちらを見る―――ぶにっ、と俺の頬に人差し指が突き刺さった。いりこの綺麗な指が俺の頬にめり込んでいる。これは肩を叩いて頬をつつく”ほっぺトラップ”という(言っているのは俺だけだが)やつだ。やった側のいりこはイタズラ成功と言わんばかりに微笑んでいる。
・・・・・・・・・この女、他人の分際で楽しそうに人をからかいやがって。けらけら笑うその頬を摘まんで思いっきり引き伸ばしてやるの刑に処す。刑罰執行!
「あっはっはっ!引っかかった引っかかっふぇあぁぁぁ!?いふぁいいふぁいいふぁい!!」
「お前は・・・俺を怒らせた。主に小学生の嫌がらせ的な方面で!」
むにーん・・・ふむ、意外とよく伸びる。餅のような肌触りという奴か。しかしやられるいりこは堪ったものでは無いようで、上手く動かない口で必死に謝罪をしていた。まったく、人をからかうからそういうことになるのだ。
「ごえんなふぁいほうひまひぇん!ゆるひてくらふぁ〜い!!」
「・・・ふんっ」
謝ったのでとりあえず刑罰終了。あうあう言いながら伸ばされた頬を押さえて涙ぐむ残念女を尻目に俺はとっとと学校へ向かうために踵を返す。結局今日もいりこに付き合わされて余計な時間を喰った。こいつは優等生のくせに俺に構って馬鹿をやらかすから、付き合い過ぎると本気で遅刻である。
「ああっ、待ってぇぇ〜!」
「待たん!」
・・・こいつが幼馴染かどうか
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