夢と幻
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返しの魔法である、三重魔法陣・鏡水を放つ。
三重の魔法陣に、狙ったように直撃していく氷の剣は更に軌道を変え、セスとルナへと向かって行った。
「くっ・・・太陽よ―――――――」
「させるかぁッ!」
「あぐっ・・・ああああああああっ!」
「きゃあああああっ!」
太陽の光と熱で氷を溶かそうと考えたセスは、詠唱の為に口を開く。
が、それを阻止する為にヴィーテルシアがブーメランの要領で投げたオーロラガーデンが腕に当たり、走った痛みに思わず言葉を止めた。
そして2人に、跳ね返った氷の剣が直撃する。
「うくっ」
「だ、大丈夫か?」
「き、気にするな・・・」
ブーメランは、投げれば戻ってくる。
その要領で投げたオーロラガーデンも、当然戻ってくる。
が、ヴィーテルシアはそれを掴み損ね、くるくると回転するオーロラガーデンを思いっきり右手首にぶつけてしまったのだ。
それには思わずミストガンも戸惑った様な声色になり、じくじくと痛む右手首を抑えながらヴィーテルシアは無理矢理微笑んで見せた。
「ルナさん、大丈夫ですかデス?」
「ええ、私は大丈夫です」
が、2人は特に大きな怪我もなく立ち上がる。
勿論それなりの傷はあるし、体力も魔力も消費はしているが。
「それにしても・・・流石は妖精の尻尾最強候補の1人。私とセスさんが3分以内に相手を殺せないのは初めてです」
パンパンとチュニックについた埃を払うと、ルナは真っ直ぐにミストガンを見据える。
冷たかった瞳が、更に冷たくなるのにヴィーテルシアは気づいた。
ふと視線を動かせば、セスの顔には妖しい笑みが浮かんでいる。
(・・・嫌な予感がする)
ルナとは知り合いだが、こんなに冷たい瞳は見た事がない。
セスの笑みも容姿と相まって妖艶さがぐっと増すが、この戦いの場ではそれが戦慄になる。
本気の表情だ、とヴィーテルシアは思った。
先ほどまで手を抜いていたのかは本人達にしか解らないが、今から何かが変わる気がする。
それも、ヴィーテルシア達側からすれば、よくない方向に。
「・・・おい、ミストガン」
「ああ、解っている」
その不穏な空気に、心配したヴィーテルシアが声を掛けると、ミストガンはこくりと頷いて杖を構えた。
覆面から覗く目が、更に鋭くなる。
「――――――」
「?」
小さい呟きが聞こえた気がして、ヴィーテルシアはミストガンを見上げた。
が、特に変わった点はない。
気のせいだったか、と視線を下げる。
(魔力量だけを見ればミストガンの方が明らかに多い。が・・・)
ヴィーテルシアは知っていた。
最強候補と呼ばれるミストガンの秘密を。
彼の強さを支えるモノが何なのかも、全て知っている。
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