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大阪の魅力
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第七章

「言っておくけれどな」
「違う違う、大阪はな」
「大阪は?」
「中学生、いや小学生からおばちゃんなんだよ」
 そうだというのである。
「それから死ぬまでな。ずっとおばちゃんなんだよ」
「子供の頃から死ぬまでか」
「そうなんだよ。だからな」
「ああ、だからか」
「おばちゃんはどうだよ」
「会社の中にも一杯いるけれどな」
「凄いパワーだろ」
 彼は笑って今度はこう話したのだった。
「もうな」
「破壊力あるな。テンションも高いしな」
「それがおばちゃんなんだよ、大阪の」
「最初はびっくりしたぞ」
 猛久はここでも笑っていた。自然な笑顔である。
「電車の中で大声で話して笑って阪神のグッズ持ってるんだからな」
「そんなの当たり前だろ」
「そうだな。大阪じゃな」
「それが大阪なんだよ」
 広島の彼はこう言って断言する。
「広島じゃ縦縞が赤になるけれどな」
「広島も変わらないのか」
「けれど大阪はその上を行くぞ」
「野球がか?」
「いや、おばちゃんがだ」
 そちらであった。
「おばちゃんがなんだよ」
「そっちか」
「もうな。一度見たらびっくりするけれどな」
「何度も見てるとな」
「親しみが持てるだろ」
「これがわからないんだけれどな」
「わかるものじゃないからな」
 彼は猛久に話した。
「前言ったよな」
「ああ、わかるんじゃなくてだな」
「感じるんだよ」
 それだというのだった。
「わかったな」
「ああ、女の子でもか」
「女の子もおばちゃんだよ」
 彼はまた猛久に話した。
「それは忘れるなよ」
「おばちゃんか」
「口煩くてそれでいて妙に気がついて味には五月蝿くて」
「厄介だな」
「だがそれがいい」
 彼はこんなことも言った。
「それがいいんだよ」
「急に何か戦国武将みたいな言い方になったな」
「ああ、大河ドラマ観たからな」
 彼は笑ってこんな風にも話した。
「だからな」
「それでか」
「まあとにかく大阪は感じるんだ、そして慣れろ」
「慣れろか」
「そういくといいからな」
「大阪っていうのは特別な街なのか」
「いや、特別かというとそうじゃない」
 決してそうではないとも話す。
「そうでもないんだ、これが」
「しかし理解するより慣れろってのはな」
「そのうち慣れるさ。一年経ったらな」
「ああ、一年経ったら」
「この街から離れるのが嫌になるからな」
「本当かね、それは」
 猛久はわざと笑ってこんな言葉を出してみせた。
「嘘じゃないのか?」
「嘘でこんなこと言うか」
 彼はまずはこう言って否定してみせた。

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