第百六十四話 二兎その十一
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「それは確かに」
「せめてもの、でしたな」
「そうじゃな。だが」
それでもだというのだった。
「闇の服の者達はな」
「一体どういった門徒達だったのか」
「どうにもそれがですな」
「全くわかりませぬな」
「とかく」
「それがしもです」
ここで言って来たのは雑賀だった、彼は忍としての立場から話す。
「あの者達については」
「全くわからぬか」
「呼びもせぬ、頼みもせずに出て来ました」
「どの国でもそうじゃったな」
「紀伊でもでした」
まさにだというのだ。
「急に出て来て」
「それで、だったな」
「はい、まことに」
雑賀は難しい顔で顕如に述べていく。
「訳がわかりませんでした」
「そうじゃな、拙僧もずっと調べさせ調べているが」
それでもだというのだ。
「あの者達はな」
「正体がわかりませぬな」
「一人として」
「伊賀者がおったというが」
ここでだ、顕如はこのことを言った。
「石川五右衛門がな」
「その様ですな」
「伊賀者を雇った覚えはない」
顕如はこのことについてはっきりと言い切った、彼にしてみれば全く身に覚えのないことだった。それも全くだ。
それでだ、ここで。
高僧達に顔を向けてだ、こう彼等に問うた。
「御主達は雇ったか」
「いえ、それは」
「拙僧もです」
「そうしたことはありませぬ」
「全くです」
「そもそも伊賀者は」
誰もがこう言う、顕如は彼等の目を見るが一人たりとも嘘を吐いてはいなかった。嘘は目に出ることを知っているから見たのだ。
それでだ、顕如もこう言う。
「本願寺の忍は一つだけじゃ」
「我等だけですな」
ここでまた雑賀が言って来た。
「左様ですな」
「そうじゃ、御主達だけじゃ」
まさにだ、彼等だけだというのだ。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「あの者達の中には伊賀者がいた」
「誰かが雇ったのか」
「伊賀には二つの流れがある」
ここで顕如はこのことについても言った。
「服部半蔵殿、そして百地三太夫殿のな」
「その二つですな」
尚織田家は滝川から甲賀者を抱えている。そして蜂須賀の者達や飛騨者と大きく分けて三つの忍達を抱えている。
「そして服部殿は徳川家に仕えております」
「しかし百地殿はな」
「誰にもです」
「これまでどの家にも仕えておりませぬ」
それが百地家だというのだ。
「これまで誰にも」
「そうじゃな」
「石川殿はその百地殿の下におられます」
石川、楯岡、音羽の三人はだ。百地の下の三人の上忍として天下にその名を知られている。かなりのことが謎に包まれているが。
「その石川殿がおられたことは」
「全くわからぬ」
本願寺の法主である顕如すらだ。
「これがわかることはな」
「ど
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