第百六十四話 二兎その八
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「ですからここは」
「今からまだ間に合います」
「何とか天海殿を呼び止めてです」
「石山を攻め落としましょう」
「何としても」
「今ここで攻めればどうなる」
だが、だ。信長はその彼等にこう言うのだった。
「今の我等が」
「その時はですか」
「どうなるかですか」
「そうじゃ、どうなるのじゃ」
このことをだ、彼等に問うたのだ。
「その疲れきった御主達で」
「そのことは構いませぬ」
「我等ももむのふ、命なぞ何時でも捨てられます」
「殿の為なら」
「織田家の為なら」
「その言葉だけを受けておく」
頑とした口調だった、まさに一歩も引かない。
「今はな」
「殿、それでは」
「ここは」
「御主達を失う訳にはいかぬ」
信長は眉を顰めさせ苦い顔で言った、その言葉もそうなっている。
「だからじゃ」
「殿、では」
「我等のことを気遣ってですか」
「今はですか」
「攻めぬと仰るのですか」
「言わぬ、そのことはな」
そこまで言う信長ではない、だからだった。
このことは言わなかった、そのうえでの言葉であった。
そしてだ、次に言うことは。
「では陣を払う、しかし勘十郎は摂津に残れ」
「それがしはですか」
「三郎五郎もじゃ」
信広もだというのだ。
「よいな」
「残す兵は」
「石山とは和議を結ぶことになるが目付は必要じゃ」
それでだというのだ。
「五万は置いておく」
「でjは我等は引き続き」
「うむ、ただもう陣は張ることはない」
その必要はないというのだ。
「城に入り備えよ」
「わかりました、それでは」
「その様に」
「他の兵達は戻し休ませる」
五万以外の兵達はというのだ。
「そして他の者達はじゃ」
「我等はですか」
「これより」
「二条城に行くぞ」
そこにだというのだ。
「ではよいな」
「わかりました、それでは」
「次は」
「それから休むがよい」
二条城の和議がこの度の戦の締めとなるというのだ。それに出よというのだ。
「わかったな」
「わかりました、それでは」
「その様に」
家臣達も今は信長の言葉に素直に頷けた、彼の真意がはっきりとわかり心の中に滲みたからだ。信長はその彼等にこうも言った。
「さて、二条城に入る前にな」
「その前とは」
「何を」
「湯に入れ」
それで身体を清め休めよというのだ。
「そのうえで二条城に入れ、そして城から出てもじゃ」
「湯をですか」
「楽しめと」
「この度はご苦労じゃった、岐阜に帰ってから論功はするが」
その前にだというのだ。
「そうせよ、よいな」
「そこまでお考えとは」
「殿、我等のことを」
「よい、この度は皆よくやってくれた」
信長もその顔には疲れがある、、だが彼は己のこ
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