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少年と女神の物語
『雷鎚を持つ巨人』編
第八十四話
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「もー、ムー君遅い!」
「無茶言うな。これでも急いだほうだし、この人だかりのせいで時間がかかったんだよ・・・まあでも、俺が遅くなったのは事実か」

 まず、俺はチャイナドレスを着ている林姉にそう言った。

 なるほど、あの人だかりの中には久しぶりに見ることができる林姉+コスプレを一目見ようとしたファンの連中もいるのだろう。
 そして、その他の家族も見ていくと・・・

 鎧を着ているわけではないが、騎士っぽい感じの崎姉。
 ローブを着て手に杖を持っている、魔法使いっぽい感じのリズ姉。
 全体的に白で統一された、女神の格好をしているアテ。
 体にピッチリと張り付いた、格闘家っぽい感じのマリー。
 とんがり帽子を被って、魔女っぽい感じの服装の立夏。
 二人一組のアイドルユニットの衣装を本家よりも着こなしている切歌と調。
 みんなの影に隠れて野次馬に見られないよう努力している、巫女服姿の氷柱。
 おもくそ女王様の格好(本人の性格ゆえか、妙に似合っている)のナーシャ。
 一般的なメイド、和装メイドのセットになっているビアンカと桜。
 そして、少し子供っぽいデザインの和服を着ている狐鳥。

 ・・・そりゃ、目立つよな。

「・・・って、何で兄貴は制服なのよ!」
「・・・はい?」
「武双君、毎年劇の格好でいるのを恥ずかしそうにしているから、今年はみんなでこういう恰好をしてみたのよ」

 と、崎姉の言葉でようやく氷柱の言いたいことを理解した。
 ああ、なるほど。それでみんなしてこんな恰好を・・・この間布を買いに行ったのは、これのためだったんだな。
 みんなが着てるの、どう見ても手作りだし。アテのとか、俺が作った封印用のアクセサリーが組み込まれてるし。

「あー・・・そういうことなら、っと」

 俺は芝右衛門狸の権能を解除して、さっきの劇の格好・・・ロミオに戻る。
 やっぱり、恥ずかしいが・・・まあ、去年までと比べれば幾分かましだな。
 その代わり、このメンバーの中にいるあいつは何だ、という視線がいつもに比べて厳しいけど。

「さて、と。それでは行くとしますか」

 動き始めれば多少はこの人だかりも散るだろう。そう考えて俺は移動するように促した。
 案の定、大体は散ったけど・・・一部残ったので、生徒会権限で強制的に散らした。
 ついでに、誰が写真を撮ったかも全部調べて、すべて機械ごとデータを壊した。こんな時でも、権能って便利だよな〜。

 全なる終王(ゼウス・エクス・マキナ)知に富む偉大なる者(ルアド・ロエサ)。この組み合わせでどうにかなった。

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