第三章
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いた。起き上がろうとすると身体に鈍い痛みが走る。それのせいで起き上がることができなかった。
「痛っ」
「まだ動いちゃ駄目よ」
美代子はそんな夏実に声をかけてきた。
「まだ。安静にしないと」
「私、どうしたの!?確か」
トラックが前に来たのは覚えている。だがそれからは。けれどおおよそのことはわかった。
「事故ね」
「そうよ」
美代子は答えた。
「貴女、トラックにはねられたのよ」
「そう」
やはりそうであった。それで納得がいった。
「それで。ここに担ぎ込まれたのね」
「ええ」
やはりそうであった。美代子の言葉を聞いてそれがわかった。
「あんな大きなトラックにはねられて。よく大丈夫だったわね」
自分でもそれが不思議だった。身体の感じでは何処もある。目も見えているし耳も聞こえる。手足の感触もちゃんとあった。身体はかなり痛むがそれでも無事なことは無事であった。
「血が。凄かったのよ」
「血が」
「そうよ。それで本当に危なかったんだから」
「そうだったの」
「しかも病院でA型の血が足りなくて。どうしようかと思ったけれど」
「何かあったの?それで」
「お父さんがね」
「お父さんって」
誰のことかすぐにわかった。元治のことだ。
「輸血してくれたのよ。血液型が同じだったから」
「そう」
夏実はそれを聞いて自分の心の中で何かが動くのを感じていた。
「随分輸血したわ。お父さんの方が大丈夫かって思う位。それでも」
「輸血してくれたのね」
「ええ」
美代子は頷いた。
「自分は大丈夫だからって。それで」
「そうだったの。私の為に」
その話を聞いていると自然に俯いてしまった。
「それで今私の中にあの人の血が流れているのね」
「そうよ」
美代子はまた頷いた。その表情からは何も心は読めない。
「あの人も。随分やつれたけど」
「それで私が助かったの」
心の中に感慨が深まっていく。
「あの人のおかげで」
「お父さんがいなかったら。今頃は」
「そうよね」
顔には出ないが感情が昂ぶっていく。
「私なんかの為に」
「当然じゃない」
美代子はそんな夏実に言った。
「当然って?」
「だって親子だから」
「親子・・・・・・」
「そうよ」
そしてまた言った。
「親が子供を助けるのは当然でしょ。それに」
「それに?」
「お父さんはね、真っ先に夏実のところに駆けつけたのよ」
「私のところに?」
「そうよ。そして」
「輸血してくれたのね」
「ええ」
その言葉にこくりと頷いた。
「それで。貴女は助かったの」
「あの人のおかげで」
「これでわかったでしょう?私が何故お父さんと再婚したか」
「・・・・・・・・・」
それには答えなかった。いや、答えられなか
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