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格好いい人
第四章
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第四章

「その二つが」
「僕はその二つがあればいいんですよ」
 鈴木さんも海を見ていた。そしてまた微笑んでいた。
「その二つがあれば」
「そうなんですか。その二つが」
「はい、そうです」
 また微笑んで私に話してくれた。
「今度は身体を壊さないようにしてますよ」
「それであくまに船にですか」
「やっぱり好きですから」
 船に乗りたい理由はそれしかなかった。
「船が」
「そして海が」
「はい、僕はこれからも船に乗ります」
 鈴木さんの願いはそれしかなかった。
「もう二度と降りないようにして」
「頑張って下さい」
 私は微笑んで鈴木さんに話した。
「その御心があれば絶対に大丈夫ですよ」
「大丈夫ですか」
「はい、何があってもです」
 私も鈴木さんに言った。
「鈴木さんは絶対に船から降りませんよ」
「そうですか」
「心ですね」
 私はまた言った。
「やっぱり。心があればそれで通っていくことができます」
「僕もそう思います。心があれば大丈夫です」
「じゃあ僕は」
「鈴木さんには心があります」
 私も何度も言った。鈴木さんの話をここまで聞いて言わずにはいられなかった。
「ですから」
「心ですか」
 鈴木さんは私の言葉を聞いて少しずつ考える顔になった。
「それがあればですね、やっぱり」
「そうですよ。もう船に乗るのは無理だって言われたんですよね」
「はい」
 鈴木さんはまた私の言葉に素直に頷いてくれた。
「そうです。その通りですよ」
「けれど鈴木さんは船に戻ることができました」
 これが答えだ。鈴木さんは大好きな船に戻ることができた。一言で言えばそれだけだ。しかしそれで終わりというわけでもないのだ。
「その心があるから」
「何でも確かな心があれば」
 鈴木さんは微笑んで述べてくれた。
「願いも。一度は挫折した願いも」
「叶えることができますね」
「そうですね。本当に」
 その微笑みで私に答えてくれた。私はそんな鈴木さんを見て心から尊敬した。確かにあまり器用とは言えないし優男だ。けれどその心は誰よりも強くそして格好いい。この人の格好よさ、心の格好よさを見ることができて私もまた心から満足した。
「それでですね」
「はい、今度は」
 今度は鈴木さんが私に声をかけてきてくれて私もそれに応える。
「またすぐに船に乗ります」
「そうですか。またですね」
「今度はインド洋に行きます」
 鈴木さんはまた海を見ていた。遥かな水平線からまだ続いているその海を。
「長くなりますよね」
「楽しんできて下さいね」
「はい、船は本当に最高ですよ」
 鈴木さんの笑みは満面の笑みになっていた。
「そして海も」
「そうですか」
 私もまた満面の笑みで鈴木さんの言葉を聞くことが
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