2ndA‘s編
第八話〜長き一日の終わり〜
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さ”だ」
吐き出されるように呟かれた言葉は、陽が沈みきった街に響くことなく消えていく。
手を握り締め、再び溢れ出しそうになる感情を抑えようとするが、手に走った痛みが包帯を巻いていることを思い出させたことで、それもできなかった。
「……わかったようなことを言って!」
今度は語気が荒くなり、その声は少しだけ街に響く。
響いた声にハッとして、顔を上げるとそこには丁度よく公共のベンチが設置されており、自分をもう一度落ち着けさせるためにも、ライは少し乱暴になりながらも腰を下ろした。
『マスター……』
街に出ているために念話による会話で、蒼月が気遣わしげに語りかけてくる。
その相棒に反射的に『大丈夫だ』と返そうとしたが、それがただの強がりになってしまうことは明白であると察した彼は、数度深呼吸をして自分を落ち着けるためのアピールをした。
『ごめん……心配をかけた』
『ご無理をなさらずに』
たったそれだけのやりとりであったが、そのライの声音はいつもの冷静なものに切り替わっている。それをどこか悲しく感じつつも、蒼月は自分が果たした役割の報告を行い始める。
『ご指示の通り、あのマンションでハッキングを行いました。予測通り、あの部屋にはミッドチルダで使用されている端末が存在していました』
その報告自体にライは特に反応は見せない。
何故なら、リンディ・ハラオウンが管理局員である時点で、その住居には仕事に対応できる機材がなければ、仕事がすることができないと考えていたのだから。
あらかじめ予測していたことを聞き流しつつ、ライは自分の気になっていることを蒼月が早く報告して欲しいと内心で少し焦れた。
『データの中には、この第97管理外世界近辺の次元世界の地図がありましたので、それのコピーは保存してあります。しかし、流石に最近のヴォルケンリッターの活動記録までは存在していませんでした』
前者の報告には安堵し、後者の報告には考え込む仕草を見せるライ。それはある意味で予測通りの報告であったために、欲したデータが存在しなかったことに悲観することはない。
ちなみに蒼月の手に入れた次元世界の地図とは、次元世界間の近さを表す海図のようなものである。ライがそれを欲しがったのは、蒐集を行っていると言うヴォルケンリッターの行動を予測するためだ。
ライトしては、これまで彼らが行動を起こした世界の記録なども欲しかったが、それは高望みしすぎか、と内心でため息をひとつ付いた。
『これからどうなさいますか?』
『しばらくは静観だ』
『は?』
質問に即答で返され、蒼月は思わず聞き返す。
Cの世界に触れたおかげか、本当に人間らしくなったものだ、と思いながらもライは自分の考えを念話で相
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