変わらぬ絆
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香を裏切るか、曹操を裏切るかの選択に陥ったなら、きっとそうする。傍観に逃げるなんて……皆の望んでくれた私じゃない。待つだけのカタチで幽州を与えられて、どうしてこれから私として胸を張って生き、民に平穏を齎せる事が出来ようか。でも……秋斗は私と同じ事をしても全く違う。
自分はどうかと考えて、行き着いた答えに納得した白蓮は肩を落とした。秋斗のそれは、自分と同じ選択をしようとも、平穏な世を目指す為の桃香への異質な信頼からなのだと感じて。
その異質さには星も気付いていた。人を救いたいと言いながら、冷徹に命を数で計算して切り捨てる彼が……自分達を含めた劉備軍とは全く違うと感じているが故に。
対価を聞いて倒れた理由も、桃香のやり方に自身との矛盾を感じ、白蓮達や部下達の想いに押しつぶされたからだと考えていた。
「……あいつはこれからどうするかな?」
「秋斗殿ならば……雛里の想いを振り切ってでも戻る可能性は十分にあるかと。というより、彼が願えば雛里が戻すでしょう。先の言の通り今度は力付くで、桃香殿を叩き潰してから取り戻すために。雛里がわざわざ言ったという事はそうなる可能性が高く、我らに秋斗殿を支えてくれと言っていたのやもしれませんな」
冷たく言い放つ雛里を想像して、ゾワリと肌が泡立ったのは二人共であった。
彼女達の記憶にあるのは、優しく、引っ込み思案で、朱里の陰に隠れがちだった雛里しかいないのだから当然。
今の彼女は彼を想いながらも常人の思考からは逸した所にあると見て、星や白蓮は恐怖を感じていた。
何故こうまで変わってしまったのか、と沸き立つ疑問は頭を渦巻き続ける。
「……歪んでるな」
たった一言、白蓮は無意識の内に零した。どちらが、とも言わずに。
秋斗が歪んでいるのか、それとも雛里が歪んでいるのか、言葉を放った白蓮自身でさえ、首を傾げた。
重い沈黙は心に不安の翳りを垂らしていく。分からない、というのはさらなる恐怖に繋がる。
ふるふると首を振るって、白蓮はどうにか話を切り替えた。
「私は、さ。ちょっとこの軍でのこれからの事をゆっくり考えてみようと思う。鈴々は一人じゃ辛いだろうから出来るだけ一緒にいるけど……星はどうする?」
「……少々、この胸にある澱みを消し去るには時間が必要なようです。曹操領行軍の間にどうにか消化しますので待っていただけますかな?」
部下では無くなったとて、相も変わらず白蓮の臣下でもあるのだと示す星に嬉しさが込み上げて笑みが零れた。
「ふふ、全然構わない。まあなんだ。どんなになっても私はお前の友達だからさ。安心して決めてくれよ」
白蓮がどんな人でであるのか知らぬ星では無く、暗に示された事柄に気付かぬ彼女でも無い。いつものように、星は白蓮の甘い優しさに心が満た
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