第42局
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さっさと座ってはじめんか。おじょうちゃんもただ待ってるのは何じゃな。緒方君と10秒碁を打つがいい」
「え!あ、はい!」
「まあ、仕方ないか、藤崎、こっちで打とうか」
「奥さん。囲碁のことは分からないとのことじゃが、少しだけ時間を下され。何、30分もかからんはずじゃ」
「はぁ」
あかりの母がきょとんとする中、2組の対局は始まった。自然と、母の視線はあかりに向かった。
あかりは緒方相手に善戦したと言っていいだろう。中盤の左辺での激しい戦い。お互いがお互いの隙を突く激しい展開となったが、あかりの読みは緒方に届かなかった。あかりの石は切断され、何とか小さく生きたものの、その隙に緒方が大きく地合いを広げた。そのまま差が詰まることはなく、あかりの投了で終局した。
あかりの母は、勝負の内容に関してはまったく分からなかった。しかし、真剣に碁盤に向き合い、大人相手に本気で勝負するあかりの様子には大きく驚かされていた。
−この子、こんな顔で碁を打つのね……。碁なんかただの遊びだと思っていたんだけど……。
20分ほどで終わったあかりと緒方の対局を横に、ヒカルと芹澤の対局は熱戦が続いていた。序盤、まったくの互角の展開に、芹澤は驚愕の念を隠せなかった。
−まさかここまで打てる子供がいるとは……。何者だ、この少年は。この手応え、この気迫。これではまるでリーグ戦だ。なんとも驚きだな。
ただ、芹澤はリーグ戦直後と言うこともあり、本調子とは言い切れなかった。中盤、芹澤自身気づかなかった緩手(やや悪い手)をヒカルは見逃さずに攻めた。芹澤が気づいたときには、形勢はヒカルに傾いていた。
−そうか、しまった。さっきのノビはこっちを先にハネルべきだったか……。しかし、この難しい形をこの少年は読みきっていたのか。しかも10秒碁だと言うのに……。
一手10秒の早碁は、プロでも決して簡単なものではない。10秒では深く読むための時間もなければ、形勢を細かく目算するだけの時間もない。直感やセンスが大きく影響するのだ。
あかりの母の視線も、ヒカルに向けられていた。
−この子もいつの間にかこんな顔をするようになっていたのね……。まだまだ子供だと思っていたけど、いっぱしの男の顔じゃないの。
終盤、すでに形勢は追いつけないものになっていた。芹澤はこのまま行けば自分が負けることを悟っていた。だが、ヒカルを試すかのように、最後まで打ち切った。そして、ヒカルは一切のミスなくヨセを打ち切った。
「ふむ。進藤の8目半勝ちじゃな。芹澤君、どうじゃね、この進藤は」
「いや、驚きました。見事にやられました。君はプロではないよね。院生かい?」
「いえ、院生じゃないです。それに、今日は芹澤先生がお疲れでしたから。おばさん。プロの対局、それも今日先
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