第百三話 幻術の終わりその三
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「明日の朝はな」
「そうされますか」
「その為にもだ」
今は、というのだ。
「闘いそしてだ」
「勝たれますか」
「そうする」
こう言ってだ、そのうえで。
剣を出して構えてだ、そうして。
前を見た、しかし。
敵の気配はしない、しかしマガバーンはというと。
前に出てだ、海の上を歩いた。そして言うことはというと。
「さて、これでいいか」
「海は今は」
「敵地だな」
「はい、それでもですか」
「虎穴に入らずんばだ」
まさにだ、敵地に入ってだというのだ。
「虎子を得ずだ」
「闘う為にですか」
「こうして入った」
まさにというのだ。
「そうしてな」
「怪物を待たれますか」
「そうする、そうすればだ」
必ず、というのだ。
「敵は来る」
「だから入られましたか」
「来ない筈がないな」
「この怪物は海にいます」
「それならだ」
敵地に他ならない、それならばというのだ。
そしてだ、実際にだった。
何処からか声がしてきた、その声はというと。
歌声だ、まるで幻想の中にある様な。その声を聴いてだった。
まがバーンは確かな声でだ、こう言った。
「セイレーンだな」
「そうです」
まさにというのだ。
「セイレーンもまた、です」
「怪物でだな」
「しかも。気付く者は少ないですが」
「力は強いか」
「オルフェウスと戦えたのです」
音楽においてだ、オルフェウスは英雄の一人であるが彼は英雄達の中で異彩を放っていると言っていい。
「ギリシアにおける最大の天才と」
「音楽のだな」
「そうです、アポロンの子と」
それだけに、というのだ。
「セイレーンもまた強大なのです」
「神に匹敵するまでに」
マガバーンは目を凝らした、その前を見た。するとだった。
海の上に鳥達がいた、闇夜の中に白く美しい鳥の姿が見える。
そしてその頭は人間の美女のものだった、その美女の口がこの世とは思えぬ美声で素晴らしい歌を歌っている。その怪物達こそがだった。
「セイレーンだな」
「左様です」
「素晴らしい歌だな」
マガバーンも認めた、このことを。
だが、だ。今はだった。
ただ美しいだけの歌ではない、マガバーンは歌を聴きながら感じ取っていた。
「このまま聴いていると」
「そうです、次第に眠りに誘われ」
「眠ってだな」
「永遠に目覚めることがなくなります」
「セイレーンの歌には妖力がある」
これは神話にある通りだ、聴き惚れた者をそのまま死へと誘うのがギリシア神話におけるセイレーンの恐ろしさなのだ。
「それに敗れてか」
「そうなります」
「そうだな、そしてか」
「貴方はです」
「セイレーンと戦い勝ればか」
「この戦いから降りられます」
そうすればと
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