出迎え
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が時間を間違えたということですね』
「うむ。要約するとそういうことになるな」
『それなら三十分もかけずに、話せると思いますが。まあ、確かに問題ですが。それよりも問題であることを理解できていないかもしれないですよ?』
「だとしたら、そっちの方が問題だぞ、マクワイルド」
『確かに。けど、誰もが最初からわかっているわけじゃないでしょう』
その言葉に、モニターの前でワイドボーンは楽しそうに笑った。
「テイスティアか。ああ、あいつも馬鹿だったな」
『今では主席候補です。差を付けられましたね』
「貴様だけな。俺と一緒にするな」
『そう言っていると、すぐに追いぬかれるかもしれませんよ』
「ふん。そうでなければ困る。特に貴様にやってもらうことがあるからな。だというのに、また貴様は後方作戦本部などと遠回りを……」
『はいはい。それはもう二十回くらい聞きましたよ。先輩はもう時間でしょう?』
「ん、ああ。そうだな。残念ながら貴様を出迎える事はできないようだ」
『俺は残念ではないですけどね。では』
通信が切断されて――席上でワイドボーンは小さく鼻を鳴らした。
艦長室の一室で、モニターの電源を落とせば静けさが訪れる。
それもすぐにノックにかき消された。
返答をすれば、緊張を含んだ声と共に扉が開いた。
「艦長。まもなく出港いたします」
「わかった」
立ち上がれば、まだ年の若い兵士は一瞬びくりと身体を震わせる。
若干の呆れを浮かべながら、ワイドボーンは眉根を寄せる。
その様子に更に兵士は緊張を浮かべていた。
アレス・マクワイルドが惑星カプチェランカを出発して半月後、ワイドボーンが艦長を務める巡航艦を含んだ分艦隊の一つが約半年間の哨戒任務に付く事になる。運のない後輩のように最前線というわけではないが、それでも油断をしていい任務でもない。
歩きだして、ワイドボーンはいまだに扉に佇む兵士に気付いた。
ドゥニ・スタインベック――士官学校を卒業したばかりの、先ほどまで話していたアレスと同期になる。
卒業後に艦隊勤務となったからには、決して成績が悪いわけではないのだろう。
だが。
「おい。今度は間違いはないだろうな?」
「はっ。もうお待たせすることはございません」
自信を持って答える様子に、ワイドボーンはため息を隠すのに苦労する。
目の前の士官がワイドボーンを呼びに艦長室に入るのは二回目だ。
前回は二時間前――本来の出発予定時刻に呼ばれ、ワイドボーンは指揮室で三十分ほど待たされた。
なかなか出ない出発の許可にどういう事かと問いかけて、初めてそこで出発時間が遅れることを伝えられた。巡航艦一隻に不具合が見つかり、点検のために遅れるようとのことであった。
その事を向こうは
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