救世主
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慌てて息を呑みこむ。
「“別の人間”はティア嬢本体って訳だ」
当たっていて欲しくなかった。
外れる事を願っていたが―――人生、そう甘くはない。
「言っとくけど、オレは幻を盾にしようって訳じゃねぇ」
少し意外だった。
ライアーは目を見開く。
こういう場合、高確率で自分を守る盾にするものだ―――――と、ライアーは多くの戦闘経験から学んでいた。
「こうするだけだ」
口角が、僅かに上がる。
幻の周りに魔法陣が展開し、そこから植物のように鎖が生えた。
うねうねと動く鎖は、その矛先を幻へと向けている。
「テメェがオレに攻撃しようが構わねぇ。けどな、オレが攻撃を受けた瞬間、鎖が幻を攻撃する―――――あとは言わなくても解るよな?」
解った。が、それを受け止めたくなかった。
ライアーは返事はせず、ぎゅっと唇を噛みしめる。
(つまり、俺がアイツに攻撃をすると鎖が幻を攻撃する。が、痛みを受けるのはティア本体・・・という訳か)
つまり、ライアーは攻撃出来ない。
ライアーが攻撃をすれば、目に見える傷を負うのはヒジリだ。が、痛みを負うのはティアである。
そんなの、ティアを傷つけている事に他ならない。
そして、ライアーには恋心を抱く相手を傷つける事なんて、出来ない。
だからずっと想い続けるだけだったようなものだ。自分が想いを告げた時、ティアがそれによって苦しい思いをするんじゃないか、と不安で。
「汚い手を・・・」
ヒジリを倒すには、最低でもあと10回の攻撃が必要だろう、とライアーは読んだ。
だが、それではティアが10回痛みを受ける事になる。
そして、10回以内で倒せなかった場合は――――――――その先は、考えるのを放棄した。
魔法が使えない状態にあり、尚且つ眠っているティアに防御の手はない。
「汚い?へっ、バカ言ってんじゃねぇよ。戦いってのはな、勝つか負けるか、倒すか倒されるかなんだ。手なんて関係ねぇ。結果だけが全てなんだよ!」
ヒジリは叫ぶ。
ティアを助ける為に相手を倒さねばならないのに、攻撃をすればティアが傷付く。
手詰まりのこの状況に、ライアーは唇を噛みしめた。
「あぐっ!」
床に叩きつけられたと同時に、全身に痛みが走る。
乱れた金髪を結え直す事はせず、ヴィーテルシアは傷だらけでボロボロの体を無理矢理起こした。
更なる痛みが身体を襲うが、気づかないフリをし続ける。
そうする事で、痛みが少し和らぐんじゃないかと考えたのだ。
「強くはないけどしぶといデス。いいからとっとと朽ち果てるデス!」
「お断りだ!|戦女神よ、罪深き者に断罪の剣を《ヴァルキリー=ソード・オブ・コンビクシ
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