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第四十話 騒がしき日々
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れたのか、千冬さんも僕に賛同する。若干棒読みなのは気になるけど。というかこれだけ余裕がない千冬さんも珍しいな。
「ち、千冬お姉様……」
千冬さんの言葉に感動している様子のラウラさんだけど、今の一言でまた千冬さんの機嫌が急降下したよ!?
「織斑先生だ」
「で、では千冬さ」
「織斑先生……だ」
「ヤ、ヤヴォール!」
おぉ、まるで見本のようなキレイな敬礼だ。
あの状態のラウラさんを軍人に戻すとはさすが千冬さん。
「では、私も……そうですね。紫音とお呼びください」
僕も便乗して今まで通り、『西園寺』と呼んでもらおうとしたら先読みしたのか物凄く悲しい顔をされたので仕方なく『紫音』で妥協する。
やっぱり『紫音』と呼ばれるのは今でもあまりいい気はしないんだけどね……まぁ、それこそ今更か。
「むぅ、わかった……紫音」
完全に納得しているわけではないようだけれど、なんとかお姉様呼ばわりされるのは避けられたようだ。
「……ずるい」
「え?」
一仕事終えてホッとしていると、急に背後から声がした。
ラウラさんのことで周囲に全く気をまわしていなかった僕は、急に現れた誰かに驚き慌てて振り返ると、そこには頬を膨らませた簪さんがいた。
どうやら教室を出てすぐの廊下で話をしていたため、帰るために同じく出てきた簪さんが通りがかったようだ。でも、ちょっと不機嫌な理由と何がずるいのかよくわからない。
「か、簪さん?」
「私だって、西園寺さんのことを名前で呼びたいのに」
確かにそうだった。僕のわがままもあって、彼女には名前で呼んでもらうのは遠慮してもらっていたけれど、こうなると彼女だけ拒否するのはおかしい、どころか傷つけてしまうんじゃないだろうか。
それに、最近わかってきたことがある。
確かに僕は『紫音』じゃないし、その名前を呼ばれるのは抵抗があるけれどみんなが見てくれているのは僕自身なんだ。
演技をしていて完全な『紫苑』ではないのかもしれないけど、それを通して僕を見てくれている人がここにはいる。
デュノアさんや楯無さんを見て、僕はそう思えるようになってきた。
だから、もう変に拘るのはやめよう。
「ごめんなさい」
「……あ」
僕の都合を押し付けてしまっていた簪さんに対して、自然と謝罪の言葉が漏れた。
それを、彼女は拒絶と勘違いしたのか悲しそうな顔になる。
「あ、そうではなくて……これからは簪さんも私のことは紫音と呼んでくれますか?」
「はい……はい、紫音さん!」
そう言いながら嬉しそうに微笑む簪さんは、とても眩しく見えた。
まだ少し罪悪感は残るけど、彼女の笑顔を見て少しだけ許された気がする。
何はと
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