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東條希包囲網
東條希包囲網 後編
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確率で出会えるだろうと思い直す。
 ただ考えてみればそこまでして言うこともないし、ならまた明日にでも――なんて、頭をめぐらしていたら。
 後ろからきぃって、ウチが屋上に来た時とおんなじ音がした。
「――ああ、やっぱり今日はそういう日、なんやな」
 思わず笑って、声に出てしまった。
「希」
 現れた人物はウチを確認すると、小さく声を出して呼んだ。
 その声にはいつもの張りがなくて、どこか硬さを含んでいるような気がして――だからウチも数秒の間を置いて、相応の覚悟をしてから振り返った。
「エリち――」
 ラスボス襲来、かな?

「どうしたん。μ'sの練習、今日はお休み?」
 ゆっくり振り返ると、夕日を背にしたエリちの姿。
 オレンジの眩しさに思わず目を細めた。
「……ええ、今日はお休み。希は?」
「ウチは観察、やな。さっきまでお空に、弁天さんが見えとったで」
 いつもの調子を意識して答える。
 そういえば、「そういうのは貴女にしか見えていないかもしれないわよ」って、面と向かって最初に言ってくれたのは彼女だった。
「――ふふ、貴女は相変わらずね。で、それは何かの良い兆候?」
「どうやろな。こういうのって、場合によって良い方にも悪い方にも転ぶものやから、ウチにもわからへんわ」
「そう――」
 ぴゅうっと、二人の間に心地良い風が舞う。
「ねえ、希。やっぱり――」
「ウチな、思うんや」
 話し始めようとしたエリちを遮って、ウチは伝えたいことを先に言ってしまう。
「チームに大事なのはバランスなんやって。せやから一人だけ変なんがおると、悪目立ちして仕方ないし、みんなの足を引っ張ることにもなってまうんや」
「――――」
「だからウチは参加しないって決めたんよ。こういう変わり種は、裏方がくらいが丁度ええってエリちもそう思わへん?」
「……希」
「それが用事だったら話はこれでおしまい。エリちは頑張ってμ'sをまとめて、ウチはそれを陰ながらそれを見守る。それでエエって思うんよ――」
 ウチは強引に押し切ろうとした。
 エリちは何か言いたそうだったけれど、このまま彼女の横を通って屋上を後にすれば何とかなる。
 数日間はちょっとギクシャクするかもしれないけれど、それでも彼女ならわかってくれるって。
 そう思ってたんやけど。
「じゃあ、それならどうして――」
「えっ――?」
 横を通りすぎようとしていたウチの腕を、ガッシリ掴んだエリちは引かなかった。
「どうして希は、そんなに哀しそうな顔をしているのよ」
「哀しそう……?」
「送り出すんだったら、笑顔くらいもうちょっと作ってきなさいよね……」
 掴まれた腕に力が込められて、エリちの熱が伝わってくる。
「確かに希の言っていることは正しいかもしれない。いいえ、きっ
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