遭遇-コンタクト-part1/メイドのピンチ
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たどり着いた。しかし、予想以上の距離にはキツさを感じざるを得ない。伯爵の屋敷が魔法学院からそんなに遠くは離れていない。だから慣れない馬に乗って腰を痛めるくらいならと歩きか走りで向かったのだが、予想以上に時間がかかった。とはいえ、ゼロと同化しているおかげだろうか。全力で走ると30分ほどで到着した。
流石は貴族、念入りに整備された庭に噴水を設置している辺り、まさにその通りと言った感じの様式だった。
「…ったくあのキザ野郎。これ徒歩だとかなりきつい距離じゃんか…」
『おい、サイト』
ふと、街から戻ってきて以来一度も話しかけてこなかったゼロが、ようやく口を開いた。
「あ、なんだよゼロ。今ちょっと休憩しようと…」話なら後にしてほしいものだ。何せスタミナを消費しすぎてまだ呼吸が乱れたままだ。
『本気でシエスタを助けに行く気か?お前ひとりでどうこうなる相手だと思うのかよ?』
「けど、このままじゃシエスタがモット伯ってのに好き放題されるってことだろ。嫌がっているのにそんな真似をしでかそうとする奴、男として許せないだろ」
想像するだけでなんかムッとくる。俺なんか彼女いない歴=年齢なのに!と余計な嫉妬心もプラスしていたが。
『俺は別にお前がシエスタを助けようが助けないまま逃げても文句は言わねえ。俺にはどうでもいいことだからな。好きにやれ。ただ、お前が死にかけたら俺がお前に成り代わって暴れることになる。いいな?』
「へ!別に借りなくたって俺一人で助けてみせる。お前の力なんか借りねえよ」
そうだ。こんな奴の力に頼らなくたって、自分にはギーシュを打ち負かした時のような剣の腕がある。一度も剣を握ったこともないのに達人級の腕でギーシュのワルキューレをあっさり全滅させたのだ。あれさえあれば何とでもなるはずだ。
『へー、そうかい。後で手を貸してくださいなんて言うなよ?』
「あ〜あ、まだ喧嘩してるみてえだねえ。こんなんで大丈夫なのかよ?」
ピリピリした空気は剣であるデルフでさえ効いてしまうようで、いい加減ほとぼりが冷めてほしいものだと思った。
だが、そこで見張りの兵士に見つかってしまう。
「貴様!ここでなにをしている!?」
一方で、モット伯爵の領内の森。もう夕日が沈みきって暗闇が完全に立ち込めていたその中に、ある若い男がいた。
黒い上着の下に赤いシャツを着こみ、身に纏うクールな雰囲気。
ナイトレイダーの新人隊員、シュウだった。
どういうわけか…それともあの白い発光体のせいだろうか?彼もまたこの世界に流れ着いていたのだ。手には、不思議な作りをした白い短剣のようなものを握っている。
「あの屋敷の方か…」
視線の先に、サイトが訪れたモット伯爵の屋敷の明かりが豆粒よりも小さいサイズに見える。
ドクン、ドクン…。
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