第二部 vs.にんげん!
第22話 ほのおのりょしゅう!
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かった。助ける事は愚か、溶岩のただ中に浮く化け物など、楽にさせてやる方法すら思いつかない。
火の玉が落ちて弾けるごと、地面が酷く揺れた。
嫌だ。人間の魂が、あんな化け物にされてしまうなど。仲間が。
「ディアーーーーーッス!!!」
一際大きな衝撃。
つんのめって膝をつきながら、ウェルドは叫んだ。
「畜生ッ!!!」
ジェシカが、アッシュが、どこに行ったかもはや全く分からない。
ウェルドは立ち上がりながら、熱で揺らめく視界の向こうに目を凝らし、息をのんだ。
女が立っていた。
まっすぐ延びる天然の橋の向こう、緋色の髪の痩せた女が弓を手に立っている。
ウェルドを見ていた。
離れていても、目が合ったとわかった。
女はゆっくり踵を返し、腰丈のマントを熱風に煽らせながら、去って行く。
「待っ――」
よろめきながら、転びかけ、揺れる地面に膝と手をつきながら、ウェルドは橋の上を走る。見知った女へと。一人で遺跡に出入りしていると、亡きフォルクマイヤーとオンベルトより聞かされた、その女のもとへ――。
「ネリヤ!」
聞こえたかどうかわからない。だが、女は立ち止まった。
頭上が明るくなり、熱を感じる。熱さでぴりぴりと皮膚が捲れそうになる。
火の玉の雨の中を、ウェルドは走り抜ける。
そして、ネリヤの足許に滑りこんだ。
轟音の中、ネリヤがしゃがみこむ。笑っている。若い女性らしい、優しく、場違いな笑顔だった。
「――でしょ?」
轟音。
何?
ウェルドは聞き返す。自分の声すらよく聞こえない。
「……――を、……――てるの」
話しながら、ネリヤはまた立ち上がる。
「――ぉかしいでしょ?」
歩いて行く。黒い壁に開いた、人ひとりやっと通れるほどの穴の中に、彼女の姿が消えていく。
ウェルドもその洞穴の中へと逃げこんだ。轟音が遠くなる。
「ネリヤ!」
中は暗かった。手探りで歩く。何も見えない。
「ネリヤ!!」
そして黙る。人の足音が聞こえないか、耳に意識を集中させる。
「ウェルド?」
遠くからアッシュの声が聞こえた。石が散乱する洞穴を、壁に手をつきながらウェルドは歩いた。
やがてまた、赤い溶岩が見えてくる。その赤色を見つめて歩き続けると、道の先でアッシュとジェシカが待っていた。
アッシュは蒸気で火傷したのか、手と言わず顔と言わず、皮膚が真っ赤になっている。さしものジェシカも口を噤み、じっとうなだれていた。
三人は無言で地面を見つめていた。
「……さっきの魔物さ……」
ジェシカが口を開くと、再び地面が震え始める。急に頭上が明るくなった。そして、すっかり馴染のものとなった熱の感触。
再び降り注ぎ始めた火の中で、三人は道が細くなる方、暗くなる方へと、一目散に走り始め
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