暁 〜小説投稿サイト〜
やはり俺がワイルドな交友関係を結ぶなんてまちがっている。
実は、里中千枝は気が使える。
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「ね、今からちょっと話していこうよ、比企谷先輩」
小西が去った後、唐突にジャージ少女もとい里中がそう提案した。
軽くデジャヴ。何その誘い方、流行ってんの?
「悪いが、俺は帰らにゃならん」
「いいじゃん、ビフテキ奢るよ。花村が」
「おい里中、ちゃっかり何言っちゃってんの!?」
「DVD」
「ぐっ…………」
一言で花村を黙らせた里中だったが、次にはけろっとした顔で前言撤回した。
「まぁ、それは嘘だけど……お礼したいってのはホントだからさ」
「いや…………だから俺は何もしてねぇだろ」
本当に何もしていないから困っているのである。
たまたま腐った眼が活躍した、ただそれだけ。こんなんでお礼などされたら、悪くも無いのに罪悪感で一杯になってしまう。
「むー…………よし。もし来てくれなかったらこれからも先輩に付きまとう。これでどう!?」
いや、これでどう!? じゃねえよ。
そこで、考え込んでいる風だった花村が突然手を合わせてきた。
「先輩、やっぱ俺奢るんで、お願いします!」
「……いきなりどうした」
里中は置くとして、俺がコイツに奢られる理由がない。なら、何か目的があるはず。何だ、それは。
花村は軽く目をそらした。
「ちょっと、聞きたいことあるんで……」
直ぐに小西の事だろうと分かった。ただ、詳しくは予想がつかない。
俺と小西との関係を問いただしたいのか、それとも…………
「……五時までならな」
普段小町が夕飯の準備を始めるのが六時過ぎ。まだ堂島宅に慣れていないことも含めて考えると、今日はもう少し早いだろう。
ジュネスからなら三十分もあれば家まで帰れるから、それが妥当な時間だ。
恵まれるのではなく交換条件として奢られるのなら、それを断る理由はなかった。
「花村! ビフテキじゃないじゃん、コレ!」
テーブルにタコ焼きのパックが二つ置かれた時の里中の一言である。
さっきのビフテキ宣言は冗談のつもりじゃなかったんですね。
「いや、二人に奢るなら流石に肉は無理だっつーの」
「いやだー、ビーフーテーキー! 肉ーっ!」
その後も肉コールを叫び続ける里中に花村が飽きれた視線を送る。
つーか、肉肉連発するって女子としてどうなの?
「そもそもジュネスにビフテキないって」
「いや、そうだけどさぁ。そこは気分じゃん」
「どんな気分だよ……。まあ、装備する予定はあるけどな」
「それホント!? 花村のコネで安くなったりしない?」
里中の言葉に花村が渋い顔になる。
「そういうのは無理だっての……」
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