暁 〜小説投稿サイト〜
やはり俺がワイルドな交友関係を結ぶなんてまちがっている。
実は、里中千枝は気が使える。
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うと思ってるんだよね。花村、何か安いの無い?」

「ん? ああ、安いのならこっちの方だな」

遠ざかっていく二人を尻目に、俺は未だテレビの前に立っていた。
妙に引っかかっていたのだ。
昨日の出来事。夢にしては、やけにハッキリと記憶に残っている。

「これとかはどうでしょう、里中さん」

「高っ! ゼロ一杯ついてんじゃん」

「……いや、お前んちの高いがどれ位か教えてくれなけりゃ、判断のしようがねぇよ」

「………………」




その時、俺は何を考えていたのだろうか。
多分、何も考えていなかったのだろう。でなけりゃ、あんな馬鹿らしい行動しやしない。
だが、どれだけ馬鹿らしくても、それが引き金になったことは確かだ。
この時、この瞬間より、比企谷八幡の常識は大きな変貌を遂げていくこととなる。




「…………おいっ、里中、アレ! アレ!」

「どしたの、花む……うわぁっ!? 手が刺さってる!?」

二人の悲鳴ともつかない叫びで、俺の思考は回復した。
次いで、現実逃避の原因となった事象を再確認。

俺の右手が、テレビに刺さっていた。

「………………」

ともかく、左手で頬をつねってみる。痛い。

ふむ、夢ではない……のか?

「何あれ花村、どんな新機能!?」

「しらねーよ! つーか新機能な訳ねーだろ!」

ぎゃーぎゃー言いながら二人が駆け寄ってくる。

その時。

『だれクマっ!』

テレビの奥から聞こえた妙な声。

同時、手を掴まれる感覚。次の瞬間、ぐい、と腕が引っ張られる。

引きずり込まれる!?

とっさに隣の花村をつかんだが、彼のつかんだ里中も一緒に、あえなく全員でテレビの中へ落ちてしまった。






「ーーーー痛っ」

「ぐっ…………」

着地に失敗した。
硬い地面にしこたま尻を打つ。

「……くそっ、ケツが割れた」

「もともとだ、花村」

同じく尻を打ったらしい花村が立ち上がる。頭を打たなかったのは奇跡に近い。

「……どこ、ここ」

里中が辺りを見渡し、俺達もそれに倣う。

「……なんも見えねぇ」

辺りは深い霧に包まれていた。それは視界を大きく制限してくるのに加え、じめじめと質量をもってのしかかってくるようだった。

「どこだと思う、先輩」

……ふむ。

「全員揃って夢見てるんじゃなけりゃ、流れ的にテレビの中ってことだろ」

「だよねー……って、それは流石にないでしょ!?」

この状況
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