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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜Cross world〜
cross world:交角
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「ッチ。
痛覚遮断
(
ペインアブゾーバ
)
無視なんて聞いてないぞ」
ベッ!と。
口内にあった、朱色混じりの唾液を宙空に吐き捨てながら、
空中に静止する
(
ホバリング
)
する《剣聖》は腕を持ち上げ、袖で額からべったりと伝い落ちる血を拭った。血液が滲んだのか、片目が霞んできていて遠近感が掴み難くなっている。
舌打ちをもう一度した後、黒衣の少年は遥か下の地上を見据えた。
見下ろし、見下した。
そこには森があった。
過去形である。
現在は、美しかった樹木は半径数百メートル規模で根こそぎ薙ぎ倒され、丸く開けた巨大なクレーターの中心部ではヂリチリと黒煙さえ立ち昇っている。
その中央。
「………………………無傷………か」
多少土煙で、血色のフードコートが薄汚れてしまっているが、その人間のものに見える肌には傷一つない黒髪の少年が一人。
人のものとはとてもではないが思えない、思いたくないその瞳には、何の光も宿ってはいなかった。眼球をギョロギョロと動かし、現在自分が置かれている状況を機械的にサーチし、それに対する処置として最適な手法を検索する。
『………fdklj排nl除』
人外の言語が、宙空に解き放たれる。
しゃこッ、と。
ささやかな音が反射する。
見ると、彼の小さな手に、さらに小さな真っ黒いはんぺんみたいな物体が出現するところだった。
「あれ……はッ………!!」
マイを抱きかかえてソレイユの後ろにいたカグラが、信じられないような口調で囁く。
「見覚えでもあんの?」
「
饕餮
(
とうてつ
)
…………。わ、私達の捜し人が使用していた武器です」
「………………………………」
まぁ、様相までコピーしてるんだったら、とうぜん得物まで同じものだろうな。
「カテゴリーは?」
「………
鋼糸
(
ワイヤー
)
」
緋袴の巫女に抱えられた少女に、視線が集まる。
「あの平べったいヤツからは、ものすごく細い鉄の糸が出るんだよ。それがすごい切れ味なの」
「なるほど……、ワイヤーねぇ」
防ぐのが面倒そうだな、と思いつつも同時に、そもそも見えるかも怪しい、と考えたが――――
(まぁ、天帝空羅を使えばいいか)
と、 頭の中で戦術プランを練り直しながらも、少年は目前で立ち上がる怪物から眼を離せない。
否、眼を離すことさえ赦して貰えない。
ビリビリ、と。
頬をなぶる殺気が、目の前の存在がどういったものであるか再確認させてくる。
それまで出さなかった武器を取り出した。
そのことだけを見れば、追い詰めていると思うかもしれない。後に退く事ができなくなったからこそ、明確に
目標
(
ターゲット
)
を撃墜する事のできる武具を取り出したのだ、と。
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