暁 〜小説投稿サイト〜
腐敗
第五章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初
れでは」
「破産申請するしか」
 相変わらず朝売には抗議の電話が連日連夜鳴り響いている。最早それで仕事にならない程である。朝売新聞は今まさに崩壊しようとしていた。
「どうしようもありません」
「我が社はもう」
「おのれ、何故だ」
 井上もまた憔悴しきっていた。その痩せこけた顔で言うのだった。
「何故こうなったんだ」
 呻いていた。
「新聞は絶対の権力だった筈なのに」
 そう呻く彼の後ろの窓から見えるのは今日も会社の巨大なビルの前に集まる群衆だった。彼等は口々に叫んでいた。
「破産したそうだな!」
「自業自得だ!」
「そのまま潰れろ!」
「地獄に落ちろ井上!」
 彼等は垂れ幕や抗議のプラカードを持って口々に叫んでいた。
「自分が一番偉いと思っていたからだ!」
「俺達を馬鹿にするな!」
 だがその声はもう井上の耳には届かなかった。彼は憔悴のあまり空虚な抜け殻になってしまっていた。間も無く朝売新聞社は破産申請手続きに入り遂に倒産してしまった。
 井上は失意のうちに死んだ。その時日本中が祝杯をあげ葬式場の前では大歓声が起こった。その時蓄財や汚職、工作の数々も公になり今度は朝売新聞社に地検から強制捜査まで入った。その時国民はわかったのだった。本当の腐敗とは何であるのかを。


腐敗   完


                 2009・8・26

[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ