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戦国異伝
第百六十四話 二兎その五
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「何よりもな」
「そうされるべきですか」
「この紀伊でもな」
 そうすると言ってだ、そうしてだった。
 信長は兵達を率いその武も使い彼が赴いた場所を収めた。兵を見ればそれで妙な気を持っていた国人達も収まった、そのうえで信長と実際に会い彼の言葉とその政のことを聞いてだった、その国人達もだった。
 皆従った、織田軍は紀伊もまた収めていった、しかし兵を動かしたせいで。
 兵も彼等を率いる将も疲れた、このことでもだった。
 それでだ、信長は国を収め集結した彼等を見てこう言った。
「石山には勘十郎を置いておるしのう」
「といいますと」
「どうされるのですか」
「石山は今は攻めぬ方がよいか。紀伊も手に入れたしのう」
「いえ、殿」
 ここでだ、平手が信長に言ってきた。
「紀伊も押さえました、もう本願寺は頭だけです」
「後はその頭をじゃな」
「はい、叩けば」
 そうすればだというのだ。
「よいかと」
「そうすべきか」
「殿らしくありませんぞ」
 ここで迷いを見せることがだというのだ。
「殿ならば多少無理でも機であればでないですか」
「攻めてじゃな」
「ここで一気に本願寺を平定し」
 そしてだというのだ。
「後顧の憂いを断ち摂津も完全に手中に収めるべきかと」
「この機を逃さずにか」
「はい、そうしましょうぞ」
 是非にという口調だった。
「ここは」
「皆もそう思うか」
 信長は今は断を下さなかった、そうしてだった。
 他の者達、皆疲れが顔に出ておりかなり汚れてもいる彼等を見た。そのうえでの問いであった。
「今から摂津に戻り石山を攻めるべきか」
「はい、そうしましょうぞ」
「ここは是非」
「そして本願寺を完全に収めましょう」
「何としても」
「わかった」
 信長は彼等の言葉を聞き遂に頷いた、そしてだった。 
 そのうえでだ、あらためて彼等に告げたのだった。
「では今からじゃ」
「はい、石山ですな」
「あの場に戻ってですな」
「勘十郎の軍勢と合流して攻める」
 そうするというのだ。
「総攻撃じゃ、よいな」
「はい、わかりました」
「では今より」
 家臣達は皆気力で声を出し応える、そうしてだった。
 全軍で紀伊から石山に向かう、兵達も疲れてはいるが何としても攻めるという顔であった。
 信長は彼等のその顔も見た、そして進軍中に平手に言うのであった。
「爺、他の者もじゃが」
「どうかされましたか」
「無理をすることはない」
 普段の明るいものではなく神妙な顔でだ、信長は言う。
「決してな」
「ははは、殿がいつも励んでおられます故」
「御主達もか」
「例え何があろうともです」
 今の様な状況でもだというのだ。
「我等は皆命を賭けます」
「そう言ってくれるか」

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