第百六十四話 二兎その一
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第百六十四話 二兎
信長は紀伊における門徒達も倒した、だが。
紀伊についてどうするのか、信長はこのことについて諸将に言うのだった。
「どうするかじゃ」
「紀伊をですか」
「この国を」
「うむ、紀伊を手中に収めるならばじゃ」
その場合はだ、どうするかというのだ。今は夜であり陣の外では兵達が交代で敵の門徒達を葬っていた。
その中でだ、こう言うのだ。
「紀伊の各地に兵を送らねばならぬ」
「越前の時と同じ様に」
「後始末にですな」
「そうじゃ、そうしなければならぬ」
これは絶対にだというのだ。
「しかしそれをすればな」
「即ち紀伊を手中に収めるなら」
「その時は」
「石山じゃ」
あの寺、今織田家が攻めんとする第一の場所だ。そこをどうしなければならないかというのである。彼が言うのはこのことだった。
「あの寺をどうするかじゃ」
「その時はです」
佐久間盛政が申し出てきた、織田家でも最近名を挙げている猛将である。
「石山も攻めるだけです」
「紀伊を手中に収めてからか」
「はい、それだけです」
こう信長に言うのだった、だが。
見ればその顔には疲れが見えている、それは他の者達もだ。長島での戦の時からの連戦がいよいよ限界にきていた。
信長はその顔を見た、しかし今は盛政に言うに任せた。
「ここで石山も攻め落としましょう」
「紀伊の後でだ」
「それだけです、造作もないことです」
無理をしての言葉だった、明らかに。
「紀伊を収めても」
「そう言うか」
「そうですが」
「わかった、御主の言葉はな」
信長は今は多く言わずにこう言うだけだった。
「それはな」
「それがしの案は」
「聞きはした、しかしどうするかはわしが決める」
あえてだ、その返事は置いておくのだった。
「その様にな」
「左様でありますか」
「それでじゃ。ここはどうするかじゃ」
信長はあらためて諸将にこのことを問うた。
「紀伊を収めるか、それとも」
「今から石山に行くか」
「どうするかですか」
「そうじゃ、どちらにすべきか」
信長が諸将に問うのはこのことだった。
「それを決める時が来たがな」
「そのことですが」
ここで申し出たのは羽柴だった、彼は声を前に出して言った。
「やはりここは」
「紀伊を手中に収めるべきか」
「はい、そうです」
その通りだというのだ。
「そうすべきです」
「石山よりもか」
「確かに門徒達は倒しました」
紀伊にいるだ、彼等はだというのだ。
「しかしここで紀伊を置いておくと」
「また門徒達が出るやも知れぬな」
「まして今紀伊は収まろうとしております」
門徒達を倒しただけでなく国人達も織田家になびいていっている、領民達
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ