第十話 風の令嬢その二
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「桜ちゃんがお嬢様なのもわかるわ」
「ああ、ちょっと違うよ」
「いえ、私はその様な」
しかしだった、当の桜は謙遜する様にして言うのだった。
「お嬢様やそうした人種では」
「そうか?だってこの家の跡継ぎさんだよ」
「お婿さん取ってよね、将来」
「だったらガチのお嬢様だろ」
「そう思うけれど、私達は」
「結構大変ですから」
にこりとしてだ、桜はここでこう言ったのだった。
「商いも」
「ひょっとして案外儲かってないとかかよ」
「赤字経営とか」
「赤字ではないですが何かと大変です」
こう二人に話すのだった。
「絹問屋も。和服も扱っていますが」
「それでか」
「儲かっていてもなの」
「大変です、私も子供の頃から両親と一緒に絹職人やお得意様回りをして習いごともしていきまして」
「習いごともなの?」
このことについては裕香が尋ねた。
「そうなの」
「はい、そうです」
「どんな習いごとしてたの?」
「着物の着付けに書道、茶道、華道と」
「日本のものばかりね」
「やはり着物を扱っているので」
だからだというのだ。
「日本文化も学んできました」
「それで部活はテニスなのね」
「学校の部活は好きなものをしていいと言われまして」
両親にだ、そう言われてというのだ。
「テニスをしています」
「成程ね」
「文武二道、スポーツマンシップも学ぶべきだと」
「ご両親厳しいの?」
「いえ、とても優しいです」
ここで玄関に入る、するとだった。
すぐに年老いた着物の女の人が来た、女の人は手をついて玄関に入った桜に挨拶をした。
「お嬢様、おかえりなさいませ」
「只今です」
にこりと優雅な笑みを浮かべて挨拶を返した桜だった。
「お義父様とお義母様は」
「はい、お仕事です」
「そうですか」
「それでそちらの方々は」
「私のお友達です」
桜は優雅で優しい笑顔のまま女の人に答えた。
「同じ学園の」
「左様ですか。それは」
「今日は習いごともありませんし」
桜は女の人もこうも話した。
「お部屋でこの方々とお話をしたいと思っています」
「左様ですか。ではお茶とお菓子を持ってきます」
「いえ、私が持っていきますので」
「そうされますか」
「自分のことは自分で、ですよね」
「はい、旦那様と奥様がいつも仰っていますね」
「ですから」
だからだとだ、にこりと笑って言う桜だった。そうして。
桜は玄関から上がってそのうえで薊達を自分の部屋に案内した。屋敷の中は旅館の様に広く見事な木で建てられている。
その整った気品がありそれでいて静かな趣の建物の中を進みながらだった、桜は四人を屋敷の中の一室、見事な模様の麩を開けてその中に案内した。
そこは緑の畳の部屋だった、十二畳は
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