第十話 風の令嬢その一
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第十話 風の令嬢
一行は桜に案内されて彼女に家まで来た、そこは先程まで彼女達がいたお好み焼き屋と歩いてすぐのところ、商店街の近くにあった。
その家は屋敷だった、日本の大きく古さを感じさせる屋敷が広く松や金木犀に覆われた広い庭の中に見える。その庭は城の壁を思わせる瓦のある白い壁に囲まれている。
門は大きい、やはり和風で城のそれを思わせる。その門を見て菊は薊達にこうしたことを言ったのだった。
「これ本物よ」
「本物?」
「本物のお屋敷よ」
まさにそれだというのだ。
「私の家なんて本当に小さいから」
「おいおい、菊ちゃんの家って道場だろ」
忍術のだ、それだと返した薊だった。
「だったら大きいだろ」
「道場は広いわよ、けれどお家やお庭はね」
「こうしたのじゃないのかよ」
「普通よ、普通の一軒家よ」
それが薊の家だというのだ。
「まあお弟子さんは結構いてくれてるけれどね」
「忍者志願の人はか」
「そう、けれどね」
家や庭の広さはというのだ。
「普通よ」
「桜ちゃんの家と違ってか」
「まあお金の方は道場にお弟子さん達がいてくれてるし探偵業の方も定期的にお仕事があるから」
だからだというのだ。
「普通に生きていられるだけあるわよ」
「そりゃいいことだな」
「ええ、それでだけれど」
また言う菊だった。
「桜ちゃんのお屋敷はね」
「本物か」
「大店じゃない」
屋敷を見るとあらためで認識するというのだ。
「これでお屋敷よね。お店の方は?」
「はい、すぐ傍に」
店はそこにあると答えた菊だった。
「あります」
「ほらね、凄いじゃない」
菊は桜本人の言葉も聞いてあらためて言った。
「私のお家は道場とお家が同じ敷地内にあるから」
「お店が大きくて」
「ほらね、やっぱり凄いわよ」
大店だというのだ。
「絹は凄いからね、売れ値段が」
「絹はそうだよな」
薊も言う。
「高いからな」
「それも老舗よね」
しみじみとしてだ、菊は言った。
「桜ちゃんのお家って」
「確か江戸時代からあったわね」
菖蒲がその菊に話す。
「元禄の頃から」
「よく御存知ですね」
桜からの返答はその通りだというものだった。
「その頃からお店がありまして」
「元禄かよ」
「相当なものね」
薊と菊は桜本人の言葉を聞いて顔を見合わせた。そうした話をしながら門を開けて中に入る。庭は外から見た通り相当な大きさだ。
草花が丁寧に切り揃えられていて池もある、池の中には見事な錦鯉達が見える。庭はそのまま茶道の場にも使えそうだ。
その庭の中を進みながら屋敷に向かう、木造の屋敷も相当な大きさの二階建てのものだ。青い瓦も見事だ。
そうしたものを見つつだ、薊
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