暁 〜小説投稿サイト〜
やはり俺がワイルドな交友関係を結ぶなんてまちがっている。
誰がどう見ても、諸岡金次郎は小物である。
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軽く息をついたが、いつものようなツッコミはなかった。

「お前こそ、クラスで話したりしなくて良いのか?」

いろいろあったせいで結構時間がたった気がするが、実のところ授業終了からまだ十分しか経っていない。
友達くらい息をする位に簡単に作れるであろう小町にしては珍しい。

「…………今はそんな気分じゃないよ」

「…………そか」

気の利いた言葉一つ返せない自分が恨めしい。

「……帰り、何か食えるもん買って帰るか」

堂島さんが料理ができないので、家には全くといっていいほど食材がないことを朝気づいた。

「……ほれ」

それだけ言って、小町に手を差し出す。

「…………?」

「……久しぶりに、手でも繋ぐか?」

俺の言葉に小町は少し驚いたような顔をしたが、素直に手を握ってくる。

「…………珍しいね、お兄ちゃんからこうしてくれるの」

「ま、たまにはな」

「そっか」

二人で正門を抜ける。
小町が、ごくごく小さな声で呟いた。

「…………ちょっとだけ、待ってて……すぐ、元の小町に戻るから……」




その人だかりに気づいたのは、食材の買い物を済ませて帰路を辿っていた時だった。

「人、集まってるね」

「そうだな」

小町と言葉を交わしつつ、遠巻きに見つめて通り過ぎようとしたのだが。

「……あ」

見知った人と目が合ってしまい、立ち止まらざるをえなくなった。

「堂島さん」

「……ああ、お前らか」

堂島さんが人ごみの中心からこちらへ向かってきた。

「どうしたんですか? こんなところで」

小町が尋ねると、堂島さんはボリボリと頭をかいた。

「仕事だよ……これでも刑事なもんでな」

「あ、そうだったんですか」

無駄に迫力あると思ったら、刑事でしたか。

「お前らこそこんなところで何してる。帰宅命令が出てたはずだろ」

「すいません。でも、朝みたら冷蔵庫に何もなかったんで」

俺がレジ袋を軽くあげて答えると、堂島さんは微妙な顔をした。

「それは…………すまんな」

「……何があったんですか」

持たなくなりそうな間を埋めるためそう聞くと、堂島さんは困った様子で言葉を濁した。

「いや……まあ、なんだ」

「あ、言いづらいことならいいですよ」

小町がフォローをいれ、その話は終わるかに思えたのだが。
ちょうど、二人のオバサン方が大声で話しつつ俺たちの横を通り過ぎていった。

「いやねえ、死体だなんて」

「ええ、電線に引っかかってたらしいわよ」

「見たかったわぁ」

「惜しいわね、もう
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