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やはり俺がワイルドな交友関係を結ぶなんてまちがっている。
誰がどう見ても、諸岡金次郎は小物である。
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組オーラで周囲を威圧し、ねじまげる。
普通に畏怖の対象であるが、本当に力を持っている分まだましといえよう。

対して諸岡は二タイプ目。
内輪の中でしか威張れないタイプだ。

そもそも人間は人との輪、つまりは嘘と欺瞞に満ちた世界を作りあげて安心しようとする。そのためには自分を押し殺すことも、他人を貶めることも厭わない。
時に過剰にもなりえるそれは、おそらく経験則から脳にインプットされた一種の自己防衛機能だ。

だがこのタイプの人間は、それだけでは安心できない。
だから、威張る。威張って自分が他よりも上なのだと周囲に見せつけようとする。
力なんて本当は持っていない癖に。
そうすることでしか平穏を感じることができないから。

つまり、このタイプの人間の本質はただの臆病者だ。
いつだって一人で切り抜けるぼっちとは決して相容れない存在。

…………まぁ、だからといってどうという訳ではないが。

諸岡のご高説は続いている。

「…………であるからにして、コイツはただれた都会から辺鄙な田舎へ飛ばされてきた、そう言わば落武者だ!」

「…………はっ」

思わず苦笑してしまった。それを諸岡は見逃してくれなかった。

「何だ貴様! 」

「いえ、何でも」

素っ気ない俺の返しに、諸岡は苛立ちを隠そうともせずに舌打ちした。
いや、少しは隠した方が良いぞ。特に生え際の辺り。

「文句があるなら直接言え!」

「はぁ、いえ、どうせ呼ばれるなら腐った眼、とかの方がいいなぁと」

そっちの方が言われ慣れてるからな。ただでさえ見知らぬ土地だ、受けるダメージは最小限にとどめたい。
あれ、ダメージ受けるのは確定なんだ。何か悲しい。

諸岡は失笑に包まれたクラスメイトどもの方に睨みつけるような視線を送って、次いで俺にはその五割増しくらいのを向ける。

「…………よしわかった。貴様の名前は『腐ったミカン帳』にしっかりと刻んでおいてやる」

何それ甘そうな名前。果物は腐る直前が一番甘いっていうしな。その調子で俺への当たりも甘くなってくれないかな。
無理か。無理ですね。
というか、結局腐ってるんだな、俺は。

諸岡は、まだ何か言おうと口を開いたのだが、一人の女子生徒がそこに割り込んだ。

「先生、転校生の席、ここでいいですか?」

彼女は自分の隣、窓際の空いた席を指差していた。

「…………ああ、そこでいいか。おい比企谷、さっさと席につけ」

言われなくても。これ以上目立つのは御免だ。
生徒からの視線を受けながら教室を歩き、席についた。
それを確認すると、諸岡は出席をとり始め
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