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やはり俺がワイルドな交友関係を結ぶなんてまちがっている。
誰がどう見ても、諸岡金次郎は小物である。
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ドの力を得たというのも、きっと何か意味があるのでしょう」

…………ワイルド?

「それはおいおい。それより今は優先するべきことがありますーーマーガレット」

長っ鼻は隣に座る女性に目をやる。

「お客様の旅のお供をさせていただきます、マーガレットと申します。お見知りおきを」

マーガレットと名乗った女性はこちらを一瞥すると、何かを差し出してきた。

仄かに青い光を放つそれは、鍵の形をしていた。

「それは契約者の鍵。時がくれば貴方をまたここへいざなうでしょう」

なんだそりゃ。カーナビみたいなもんか?

「…………かーなび、というものが何かは存じませんが。今はお持ち頂けるだけで充分です」

マジかよ、この車カーナビついてないのかよ。

「おっと、そろそろ時間のようです。フフ、貴方の行く先に幸多からんことを」

最後に長っ鼻がそれだけ言うのを聞いて、視界がブラックアウトした。





ぺちぺちと頬を叩かれる感触がして、俺は目を開く。
相も変わらず不景気な小町の顔がうつった。

「……おはよう、お兄ちゃん」

「…………うあよぅ」

「なにそれ……もうご飯だから」

俺渾身のおはようにくすりとだけ笑い、小町はさっさと階下におりていってしまった。

時計を見ると7:45。そろそろ学校の準備をしなければならない。

小町と入れ替わりに入ってきたカマクラを軽く撫でて、ダンボールの方へ。
『衣服』と書かれた箱を開けて、真新しい制服をとりだす。
これから俺が通うことになる八十神高等学校の制服は学ランである。
中学、高校とブレザーだったので、一体どんなもんかと思っていたのだが、袖を通してみて思う。

「………こりゃ、ブレザーの方がいいな」

試しに一番上までボタンを閉めてみると、首周りがキツイ。これまでブレザーのスカスカに慣れてきたからだろうか。

しばし考えて、それから前を全開にしてみた。やはり楽である。
学校に着く前に閉めておけば指導なんて面倒くさいものにも引っかからないだろう。
開いていても気にされない可能性はあるが。主に存在自体が認知されない方向で。
まあ、由比ヶ浜だって二年の始めの頃は校則違反のオンパレードだった訳だし、意外と大丈夫かもしれない。

そんなことを思いながら階下におりると、既に小町が朝食の準備を済まして席についていた。
俺も向かいの席につき、二人で手を合わせる。

「そういや、堂島さんは?」

「叔父さんなら昨日遅くに仕事で出てったじゃん……あそっか、お兄ちゃんさっさと寝ちゃったもんね」

「そか」

会話はそれきり。

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