第1部
第1話 我、帰還ス
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「私の焼いたクッキー、いつも美味しいって言ってくれたネ…。
今日は一杯焼いてきたから、お腹いっぱい食べて欲しいデース……」
暁や隼鷹、金剛が、それぞれ思い思いの品を海に手向ける。
酒や洋菓子など、息子が生前好んでいたものや艦娘達の趣向品を、つぎつぎと。
その中に、一際目立つ品を抱えた艦娘が居た。
「……」
「加賀さん」
「……赤城さん、私……」
ペンギンのぬいぐるみを抱えた加賀が、膝をついて涙を零した。
零した涙が抱えたぬいぐるみに落ちる。
「私の水偵がもっと早く……もっと早く敵艦を察知出来ていれば……」
「加賀さん、あれは誰の所為でも無いわ。
水偵が必ず敵艦を見つけられるなんてあり得ない、それは加賀さん、私達が1番良く知っている筈よ?」
「……提督になったら…秘書艦になるって…約束したのに…」
赤城と加賀のやり取りを遠目に見ながら、ポケットからタバコを取り出し、口に咥えて火をつけた。
「美人を泣かせんじゃねぇよ、バカ息子が……」
紫煙で肺を満たして呟いた独り言が、潮騒に掻き消された。
聞き届けるべき息子はもうこの世には居ない。
それでも、言わなければ気が済まなかった。
「…提督、千代田より入電ッ?? 千代田艦載機が敵艦隊を捕捉、6隻編成2個艦隊??」
タバコを海に投げ捨て、いち早く反応する。
「艦種はッ??」
「駆逐艦4、軽巡3、重巡2……ッ?? そんな…ッ??」
「どうしたッ??」
鳳翔の表情が驚愕に歪んだ。
「く、空母ヲ級1、戦艦ル級1、戦姫級の超大型弩級戦艦2ですッ??」
「な…に……??」
「戦姫級??」
「そんな…2隻も…」
艦娘達に動揺が走った。
戦姫級…正式名称戦艦棲姫、鉄底海峡にて確認された、深海棲艦の中では最大クラスの戦闘力を持つ固体だ。
たった1隻で艦隊を半壊させ得る火力と強靭な装甲を持ち、昨年の鉄底海峡攻略作戦において、多くの艦娘と提督が戦姫級の餌食となった。
その戦姫級が2隻も此方に向かっているというのか。
「全艦進路反転ッ?? 鎮守府へ戻れッ??
それと付近の鎮守府へ応援要請ッ?? 急げッ??」
「ッ?? 千歳艦載機より入電ッ??」
「まだ来るのかッ??」
戦姫級2隻でも手に負えないと言うのにまだ来るのか、と絶望感が艦隊を包んだ。
「3時方向、距離65000上空≠ノ浮遊物らしき物を確認ッ??
数は3、形状から艦船と思われますッ??」
「……は?」
一瞬、俺は何を聞いたのか理解出来なかった。
???
数分前 エインヘリアル艦隊
旗艦 リンドヴルム
「おい、確かなのか??」
俺は自身の目が信じられず、勢い余ってオペレーターを怒鳴りつけた。
「
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