第一話 無遅刻に至る科学のドア2
[1]後書き
「ベイビーユニバース?なんでしたっけそれ」北枕助手が聞いてみる。
「うむ。それは空間のどこにでも開いている筈の無数の穴の事なのじゃ」博士が応える「その穴は素粒子しか通れない程の微細な穴での、しかしこの空間からどこか他の空間へとつながっておるのじゃ」
「あーあーあーなるほど。それを何回か通ってケイコさんの自宅と研究所を結ぶんですね?でも博士、それではケイコさんが素粒子になっちゃいますよ」自分の事じゃないとなると北枕助手のツッコミは危機感を演出しないようだ。
「いいい、いえ。結構ですわ」ケイコ助手の拒否は聞き入れられない。
「それはそれ、ベイビーユニバースの入口を大きくしてケイコくんが通れるようにしたら良いのじゃよ」
「なるほど博士、凄いです」北枕助手がむやみに持ち上げる。
「てなわけでこれがケイコくんの家から研究所に向かう最短の近道じゃ」もうすでに造り上げてる所が天才桑畑博士の所以であろう
「ではケイコくん。行ってみたまえ」研究所の床面に恐ろしげに口を開けた暗い穴に怯え泣き叫ぶケイコ助手を容赦なく桑畑博士が突き飛ばす。
「ベイビーユニバースを三回越えたら自宅に着くぞい」ケイコ助手にその声が届いたかどうかはわからないが、ケイコ助手はもはや見えない。あっという間にケイコ助手の身体は黒い穴の中に吸い込まれていってしまった。
ケイコ助手は一回目の穴で恒星が至近距離で輝くガラス管を滑り落ちる。
「あちゃあちゃあちゃあちゃあちゃあちゃあちゃあちゃあちゃ〜」
管もかなり熱くなっている。遠くを通過している宇宙怪獣ギドドンカスとケイコ助手の目が一瞬合ったが、それに怯える余裕すら無いのが本音だろう。とにかく恒星に照らされたガラス管はすごい暑さなのだ。
ヒュンと身体が消えて今度は全てがピンク色の世界を通過する。
どうやら何か巨大生物の内臓のようだ。ぬるぬるとした運動を繰り返しながら無数の襞が蠢き、黄色や緑や白い粘液を出してケイコ助手の付近を通過していく。
「グヘー気持ち悪い〜〜〜〜粘膜イヤ〜〜〜〜」
それを抜けたら今度はミネソタ州のデブリンさんのお宅の天井からそのまんま真下に落ち、床に呑みこまれてポコンと自宅のベッドにに落っこちた。
デブリンさんも不思議そうに眺めていた。
「もうこんなの……イヤ」
しかしケイコ助手はもう一度潜らなくてはならない。
早くも寝室の脇に、自宅から研究所への入口がぽっかり口を開けているのだから
[1]後書き
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