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星の輝き
第41局
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ね……。特に終盤の本田君、フク、麻衣との対局、自分では普段通りに打ってるつもりだったの。それなのに、後から見返してみたら、とても自分の碁とは思えない感じだったの」
「そっか。塔矢はどうだった?全勝だったけど、全部普段通り打てた?」
「え!?」
「なんだよ、ちゃんと話を聞いてるのか?塔矢はプロ試験の碁、普段通りに打てたのかって聞いてんの」

 奈瀬の表情に釘付けだったアキラは、あわてて答えた。

「いや、いつも通りとは行かないさ。プロ試験だからね。当然緊張してたよ」
「え、ウソッ!塔矢君はまったく緊張なんかしていないと思ってた!ぜんぜん普通に見えてたよ!?」
「いや、そう見えてただけだと思うよ。ほとんどの相手が初対局だし、プロに直結する対局だからね。当然緊張してたさ」
「うわー、気がつかなかったなぁ」

「そこの差なんじゃないかな?」
「え?ヒカル君、どういう意味?」
「大事な試験としての対局となると、緊張するのが当たり前だと思うんだ。たとえそれが顔見知りでもね。いつもの練習と同じように行かないのが普通だと思う。だから緊張している自分の心をきちんと把握して、それを乗り越えていくことが必要なんだと思う。いつもの自分の力を出すためにね。塔矢にはそれができた。だからちゃんと実力を発揮して、実力通りの結果を残した。だけど、奈瀬は緊張してることに気づいていなかった。緊張しているのに、いつも通りの自分と錯覚して、力を出し切れなかったんじゃないかな」

「……そっか。私は緊張してたのか」

 それまで静かに話を聞いていた緒方が割って入った。

「進藤の言う事には一理あるな。確かにプロ試験の終盤で緊張を感じていないというのは不自然だ」
−当然ですね。大事な対局であればあるほど、緊張するものです。

「緒方先生でも、やっぱり緊張されるんですか?」
「そりゃそうさ。三大棋戦のリーグ戦のような重要な対局はもちろんだが、練習ではない、公式の対局では、誰と何度打ってもピリピリしてるよ。プロだからな。恥ずかしい碁を打つわけには行かない」
「緒方先生は、どうやって緊張を抑えているんですか?」
「俺の場合は抑えるのとは違うな。飲み込むんだ。緊張を丸ごとな。そして力に変える」
「緊張を飲み込む…」
「緊張すること自体は悪いことじゃないんだ。勝ちたいという気持ちの表れだからな。だからその気持ちをしっかりと認識することが大切だ。その上で乗り越える精神力が必要になってくる。そして、その乗り越え方は人それぞれなんだ」

 緒方はいつになく真剣な表情で奈瀬に語っていた。彼としても、何か思うところがあるのだろう。つられるようにアキラも口を挟む。
「緒方さんの場合はその方法が緊張を飲み込むんですね」
「そうだ。緊張を冷静に抑える人もいれば、緊張
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