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独裁政権
第五章
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た。
「その時になってやっとな」
「現に今ですが」
 リンデンバーグはシュツットガルトの後ろにある窓の外に目を向けた。
「かつては何もなく廃虚だけだったこの街も今では」
「高層ビルが建ってきているな」
「前年よりもさらに増えています」
 リンデンバーグはその巨大なビル群を見て誇らしげに述べた。もうそれは群といってもいい程にビルが建ってきていたのだった。
「そして来年には。今も」
「建っていく。工場も多くのものができた」
「国民の腹も確かに満ちてきた」
「全ては閣下のこれまでの政策の結果であることは明白です」
「しかし見えない者には見えない」
 シュツットガルトはまた人間を語った。
「見ようともしない者もいる」
「不穏分子の中にもいますが」
「そうした輩には引き続きだがな」
「ええ。ですがあくまで少数派、それも国民からは支持を得られていません」
「国民は私を支持している」 
だからこそ今も政権の座に就いているのだ。独裁者は己の力だけで独裁者にはなれないのだ。やはりそこには支持も必要なのだ。もっともそうでないならず者国家もあることにはあるが。
「あくまでな。選挙にもそれは出ている」
「では閣下」
「私はこれからも働く」
 彼は断言した。
「これからもだ。その国民と国家の為にな」
「では及ばずながら私も」
「この国を栄えさせる」
 言葉には確固たる信念があった。
「これからもな」
「はい」 
 こう二人で言い合うのだった。それからもシュツットガルトは国家の発展を念頭に指導を続けた。しかしやがてその彼も。急な病で床に伏すようになってしまった。

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