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星の輝き
第40局
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−今日の片桐君は、負けが嵩んでいるとはいえかなりいい碁を打つ。決して油断はできないな。

 初手を打った辻岡は、いったん控え室に戻り高ぶる鼓動を沈めていた。

−あせっちゃいけない。平常心だ。平常心でなければ自分の碁は打てない。まず落ち着くんだ。



 飯島は今日も伊角を相手に大なだれを仕掛ける気でいた。

−もうこうなったらとことん引っ掻き回してやるさ。伊角さんには普通に打ってもなかなか勝てるチャンスはないからな……。形によっては新手を仕掛けてやる。そこで伊角さんが間違えれば儲けもんだ。

 伊角は仕掛けられた大なだれは無難にしのいだ。だが、そこから発生した上辺での戦争で痛恨の読み間違いを犯した。その結果、右上角が死に、碁は終わった。 

 この日、辻岡対片桐は辻岡の勝ち、伊角対飯島は飯島の勝ちとなった。伊角が一歩後退。それ以外の上位陣は問題なく勝ちとなった。

 この結果、片桐は14勝9敗。残りが4戦のため、3位以内に入る可能性が消えた。








 第24戦。
 この日上位陣同士の対局は、3敗の奈瀬対5敗の本田で組まれていた。

 序盤から、お互いの小目にカカッテ来た石を挟み合う乱戦になった。

−乱戦上等!負けないわよ!

−調子がいいとはいえ、奈瀬相手には俺が勝ち越してるんだ!負けるわけにはいかない!

 互いが互いの薄みをついていく激しい争いになった。しかし、右辺の争いが奈瀬有利に分かれた段階で、形勢は奈瀬に傾いた。

−よし。これで下辺に向けて私が有利になった。地合いも大丈夫。このままでいける!

−くそっ!奈瀬がここまで強くなってるなんて。……。だめか、逆転の余地が……。

 半ば勝負をあきらめかけていた本田が打ったアタリを奈瀬はあっさりとツグ。その手を見て本田は驚愕した。

−えっ!ツギ!!

 その本田の驚きを目にして、奈瀬が改めて自分の打った手を見た。

「あっ!」

 思わず漏らしてしまった声に周囲の視線が集まったが、奈瀬はそれどころではなかった。

−あああっ!そこ、ダメが詰まったらっ!ばかっ、何でそんな手を打ったの私っ!

 そう。奈瀬が手拍子に受けたその手。本田が次の手を間違えなければ、大切なタネ石が死んでしまうのだ。通常であればありえないレベルのミス。いくら乱戦とはいえ、あまりにひどい見落とし。奈瀬は自分が打ったその手が信じられなかった。そして、本田も落ち着かないまま、正しい応手を打ち、奈瀬の石をしとめた。

 この日、奈瀬対本田は本田の勝ちとなった。それ以外は大きな波乱はなく、上位陣は白星を稼いだ。
 

 この日の全員の勝敗が確定した時点で、ここまで24戦全勝の塔矢アキラのプロ棋士採用試験合格
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