第六章
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第六章
そして背中を押された彼は。オコンネルに向き直って言うのだった。
「それじゃあ」
「来てくれるかい」
「はい」
確かな顔と声で答えたのだった。
「こちらこそ御願いします」
「よし、君は今からスターだ」
もうそれは決まっているというのだ。
「オペラ界のスターだ。メトロポリタン歌劇場が君を待っているぞ」
「いきなりメトですか」
それまでオコンネルの横で黙って話を聞いていた若い男がメトロポリタン歌劇場の名前を聞いて驚いた顔になった。メトとはこの歌劇場の通称である。この歌劇場は世界的に有名な歌劇場でありここに出るということはまさにオペラ歌手の成功を意味しているのである。
「それはまた大袈裟じゃないんですか?」
「いや、大袈裟じゃないよ」
だがオコンネルは自信に満ちた笑みで彼に言葉を返した。
「彼ならそれは確実にできるよ」
「確実に、ですか」
「アメリカンドリームのはじまりだ」
こんなことまで言うのだった。
「それじゃあマクドネル君」
「ええ、じゃあ」
「これから宜しく頼むよ」
「わかりました」
こうして彼はオペラ界でデヴューすることが決まった。まずは基礎のレッスンからはじまったがそれは瞬く間に進みあっと言う間にマエストロに認められたのだった。
「歌っていたせいですかね」
マクドネルはこうオコンネルに話すのだった。
「先生はもう大丈夫だって言ってくれますけれど」
「才能だな」
オコンネルはそれだと言う。今二人はレストランで和食を食べている。豆腐料理だ。
「それもな」
「才能ですか」
「そうさ。あと一つ言っておくよ」
「はい、それは」
「身体のことだよ」
そのことだというのだ。真剣な面持ちで語ってきた。
「特に喉ね」
「喉ですか」
「そこは注意しておいてくれ」
こう彼に言うのである。
「歌手、特にオペラ歌手は喉が命だからね」
「ロックと同じなんですね」
「そうだよ。同じだよ」
それはその通りだというのであった。
「同じだから。どちらも続けたければね」
「わかりました。それじゃあ」
「スポーツ選手になってもらうよ」
今度はこんなことを彼に話すのだった。
「スポーツ選手にね」
「っていいますと」
「まず健康管理は万全に」
「特に喉ですね」
「そう、そして」
さらに言ってみせるオコンネルだった。
「スポーツに励んでくれ。今じゃ太った歌手も少なくなってきているしね」
「ビジュアルも大事なんですか」
「そうさ、最近はね」
このことも話したのだった。
「オペラ界も変わってきてね」
「それでなんですか」
「特に君は」
「僕は」
「演じる役が特別だからね」
だからだというのである。
「余計にだよ」
「カウンターテノ
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