47:その勇姿と共に
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デイドの高笑いが夜の森に響き渡る中、俺は今……到底受け入れられない光景を目の当たりにしている。
ようやく。……ようやくだったのに。
閉ざしきった心を開きかけた……ユミルの微笑が咲きかけた、その刹那。
彼は背後からデイドの槍に貫かれた、という……その光景。
恐ろしい勢いでユミルのHPが減ってゆく。しかしデイドの凶行はそれだけに留まらず……ぐぐ、と貫いたままのユミルの体をゆっくりと持ち上げる。まるで、己の釣果を俺達に見せびらかすように。
しかしユミルはそれに構わず、ただ不思議そうに、離れつつある……ついさっきまでは繋がれていた俺の手へと、再びその腕を伸ばしていた。
するとデイドは、まるで刀の血払いをするかのように持ち上げていた槍を半ば振り下ろすように斜め下へとなぎ払い、ユミルを地へと叩き付けた。慣性に従ってずぽっと生々しい音を立てながらユミルの胸から湾曲した刃が抜け、声も無く地に叩きつけられた小さな体が一度だけバウンドし、草を撒き散らしながら二度地面を転がって、うつ伏せの形でようやく止まった。
その体はピクリとも動かなかった。顔もほとんどが流れ落ちる髪と地面に隠れて見えず、首を捻り此方に再びあの微笑みかけの表情を見せてくれることも無かった。
それもその筈だった。ダメージ毒に加えて……新たに別種の毒を塗り込まれたらしいユミルのHPバーには、マヒ状態を示す色であるグリーンの明滅とデバフアイコンが表示されていたのだ。
そして肝心の減少を続けるHPは……危険域になったところでなんとか止まり、かろうじで即死だけは免れていた。残存HPが先のダメージ毒の侵食によって刻一刻と削られているので油断こそ出来ないが……しかし防具らしい防具など一切装備していない状態で背後からのクリティカルヒットをモロに喰らい、それでもHPを全損させなかったのは、異常とはいえ流石の防御値だ……と、言いたい所だが。
――その見方は、決して正しくない。
確かに今のユミルは、化け物と比喩されるに相応しい程の異常なまでの防御力を誇っている。なにせ、代償として己の最大HP値のほとんどをこの一時の為だけに費やしているのだ。彼を実際に攻撃した俺が睨むに、それは恐らく今の最前線のボスの防御値をも軽く凌駕するほどの手応えだった。
これは俺の長年のゲーム歴に加え、SAOのあらゆる知識と感覚を熟知したソロプレイヤーたる純粋な勘なのだが……数値にして、俺の鍛えに鍛え上げたソードスキルであっても恐らく五〇もダメージを与えられていなかったはずだ。普段のモンスター相手では五桁のダメージを叩き出すことも珍しくない俺の剣を以ってしても、だ。……それほどまでに恐るべき異様な防御力を、彼は一時的にとはいえ取り返しのつかない膨大な犠牲を払って得ているのだ。
しかし。
先程のデイドの一撃
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