47:その勇姿と共に
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かし頭では分かっていた。
いかな俺でもレベル9もの解毒ポーションは持ってはいない。転移結晶を使うこともできず、回復アイテムで時間稼ぎをすることもできない。ユミルをダメージの受けない最寄りの圏内……ウィークラックの村まで運ぼうにも残りHPが少なすぎて俺の足でも、もう間に合わない。
「く、そっ……!」
ユミルはもう……助からないという事実。
……それを受け入れようとした、その時。
「――そうです! そんな馬鹿なことは、言わないで下さい……!」
シリカが俺たちの前に立っていた。
「シリカ!? どうして……」
「あたしの麻痺毒はついさっき、ようやく解除されました。リズさんも今、アスナさんのところへ向かってます。それに――」
そのシリカの肩から顔を出したのは言うまでもなく……
「ピナッ」
――きゅるうっ!
主人の合図とともに翼を広げ前へ出たピナは、その口を開けてユミルへ向かって薄青色に輝く霧状エフェクトを吹き出した。それと同時に残り少なかったユミルのHPが瞬時に全回復する。
アイテムでも結晶でもない、SAOでは恐らく残るたった一つの回復手段。モンスタースキルの《ヒールブレス》。
「――ユミルさん、あなたという人はっ……本当にどこまで優しい人なんですかっ……!」
その主であるシリカはユミルを見下ろして涙ぐみ始める。
「あたし達を殺そうと思えば一瞬で出来たはずなのに、それもせず……ピナに至っては、抱き締めて『ごめんね』って泣きながら呟いて、あたし達の毒よりもずっと拘束の苦しみも効果時間も少ないレベル1の麻痺毒で、そっと斬って……」
「…………言わないでって、言ったのに……」
ユミルは苦笑をさらに崩してシリカから目を逸らした。
「ユミルさん、マーブルさんに伝えたいことが、あるのならっ……」
ピナの《ヒールブレス》には治癒効果こそあるものの、解毒効果まではない。ユミルのHPは全快した左端から今も少しずつジリ、ジリと減り続けている。
シリカも、これが単なるほんの少しの延命措置……ユミルを助けることは叶わないと分かっているのだろう。その肩がひっくと目尻に溜まる涙と共にしゃくり始める。
「今のうちに、ちゃんとっ、自分の口で伝えてくださいっ……!」
「シリカ……」
ユミルは少しだけ目を見開いたあと、わずかに頷き……俺を見上げた。
「キリト……ボクを……」
「ああ……分かってる」
俺はユミルをそのまま胸に抱き上げて、マーブルのもとへと向かう。
「…………えへへ」
されるがままに俺に抱き上げられているユミルは突然、俺のコートの裾を指で摘まんで、照れくさそうに小さく笑った。
「ボク……キリトにお姫様抱っこなんか、さ
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