47:その勇姿と共に
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俺の手を摘まんで拒んだ。
「待って……それより、お願い……。ボクを、マーブルのところへ……」
そういうユミルのHPは今も刻一刻とダメージ毒によって目に見えて削られている。その色は既に危険域で、残り幅も本当に残り僅かだ。
それを見た俺はユミルの言葉も聞かず、慌ててその手を握って彼のメニューを呼び出させ、俺へとパーティ申請させる操作をして、今度は俺の目の前に出た承諾ウィンドウを自分の指で許諾する。
これで視界の左隅、俺のHPバー下部にユミルのHPバーとその数値も表示され、詳細が明らかにな――
「―――――。」
そして、その数値を見た俺は、目を見開くとともに言葉を失った。
そのHP数値。
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たった、それだけだった。
たとえレベル1だったとしてもあり得ない程に少なすぎる数値だった。
ユミルは言っていた。失ったHP値はもう二度と戻らないと。
それはあまりに悲惨な現実であり、事実だった。
「あーあ……見られ、ちゃった……」
ユミルがあはは、と渇いた笑いを漏らした。
対して俺は驚愕に震えた声をなんとか絞り出す。
「ユミル……お前、これ……」
「もともとはね……四万、超えてたんだよ、ボクのHP……。それが今じゃ、たったの二桁だって……おかしいね……」
「…………ッ、馬鹿野郎……!!」
俺はそう言いながら目頭が熱くなった顔を伏せた。
あと数秒でもデモンヘイトを使っていれば間違いなくユミルは最大HP値を完全に無くして死んでいたことだろう。
そんなにまでになって。
「ね……だから、キリト……」
気づけば、背を俺に大きく斬られ、右肩にも穴が開き、そしてデイドに胸を貫かれたボロボロの体で。
「はやくボクを、マーブルのところへ……」
それなのに、なんでお前は、自分の身よりも他人を案じれるんだ……!
なんでお前は今、そんなに優しげに笑っていられるんだ……!
お前は一体どこまで、優しい奴だったんだ……!
こんな子供が、あそこまで狂乱し破壊の限りを尽くした死神だったなんて……今でも、到底信じられなかった。
こんな子をあんな姿に仕立て上げた人間こそが……
「くっ……」
……いや、それよりも。
俺は頭を振って、今は余計な逡巡を振り払う。そしてポーチから解毒結晶を摘まみ出した。
「その前にユミル、お前の毒を治さないと……本当に死んでしまうぞ……」
そう言って俺は彼の体に結晶を押し当てて使用した。
しかし……
「なっ……なんで使用できないんだ!?」
俺が使用しようとした解毒結晶は、ユミルの毒デバフを癒すこともなければ、いつものように輝きながら砕け散ることもなかった
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