47:その勇姿と共に
[7/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「グォアアッ!!」
そして突き放った拳がデイドの頬にめり込み、大きく背後へと吹き飛ばした。
「俺はァッ!! 攻略組にッ――――」
言い放ったデイドのセリフは最後まで俺の耳には届かなかった。
デイドの体は光の奔流に巻き込まれ、その次の瞬間にはしわ枯れた声で叫んでいた孤独の槍使いも眩しいまでの光柱も消滅し、夜の森の静寂だけが残された。
「…………ユミルッ!!」
そうなったところで俺は彼の事を思い出し、彼がいた場所へと振り向く。
……そして絶句した。
「…………ハァ……ハァ……」
ユミルは地を這いながらも少しずつその身を動かしていた。マヒ状態でもかろうじで動く利き腕である右肩も、俺のエンブレイザーによって大穴を空けさせられて潰されたにも関わらず……彼は、顎だけの力で自分の体を引きずっていたのだ。
しかも、今も刻一刻と減るHPも顧みず進む先は、愛馬であるベリーではなかった。
「マ……マーブルッ……!」
そう。
涙と土でその端正な顔がドロドロに汚れることも厭わず向かう先は……
自分を本当の産み子のように養い、愛してくれた人のもとへ。
「ふ……う、グウゥゥゥウウウ……!!」
そして俺は、立て続けに信じられない光景を目にする。
唸り声とともにユミルは、麻痺状態でありながら腕と足を震わせつつその場でゆっくりと立ち、一歩一歩、よたよたと歩き始めたのだ。
この世界での麻痺というのは、理不尽なまでの束縛数値が設定された身体の拘束状態である。故に、どんなに《力》を振り絞っても利き腕の指先程度しか動かすことは叶わない。
しかし、この場合の《力》とは言い換えれば、いわば……意志力である。相手が理不尽なまでの数字とはいえ、それさえ凌駕する気概こそあれば体を動かせるのは理屈に合っているが……
高レベル麻痺毒相手でのそれは、想像を絶するまでの意志力を要する。まさに今のユミルは……最後の死力を尽くすかのような……あるいは、デモンヘイトによる異常なまでの筋力補正がそれを可能としているのか……
かと思ったまさにその瞬間。ユミルの周りを取り巻いていたステータス上昇エフェクトである不気味な漆黒のヴェールが、蝋燭の火を吹き消したかのようにあっけなく霧散した。それと同時にユミルが膝から崩れ落ちようとする。
「ユミルッ!」
仰向けに倒れるすんでのところで駆け付けた俺はユミルを抱き留めた。
「……あ……キリ、ト……」
ぐったりと俺の腕に抱かれたユミルはぼんやりとした目で俺を見上げた。
「デイド、は……?」
「あいつとは、もう決着が着いたよ……。それよりお前っ、あとどれだけのHPが……」
ユミルの手を握ろうとした俺の手を、彼はその麻痺に震える小さな指で
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ