47:その勇姿と共に
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スキルなのだ。威力は拳スキルの中でも決して高くない上に専用のナックル用装備も装着していないので皆無に近いが、このように《武器破壊》の可能性を秘めている。
さらに……
「なンっ、体が、動かねぇっ……!?」
例え武器越しであってもその衝撃が相手プレイヤーの身体に伝達し、拳スキル特有の長いスタンを発生させられる特性を持っているのだ。
俺は、拳を握ったまま、再度デイドに詰め寄ろうとする。
「クソがっ、こりゃァ……参ったよ、黒の剣士様よォ……! ヘヘッ……だがなァ!!」
動かぬ体に一瞬青い顔をしたデイドであったが、
「俺を殺せんのかっ!? ガキの言った『傷付けあって生きている』と言ってたことに賛同すんのか!? 結局テメーには、グリーンの俺をどうすることも出来やしねぇ!」
そういって再びニタリとした笑みと錯乱の目が蘇る。
「次はもうテメーには構わねぇ! この拘束が解けたら、今度こそその馬をぶっ殺してやる! そして俺は攻略組になるんだ! 攻略組にッ!!」
そう叫ぶデイドの目の前で足を止めた。
「そうだな。俺は、お前を殺すなんてことは……できない」
「だろーが! だったらもう余計な手出しはせずにっ――」
「けど、お前を殺すことはできなくても……」
ポウ、と再び拳にイエローの光を灯らせた。
「……お前を、ここから追い出すことはできる!」
「な、なに言ってん――うぐぉっ!?」
俺は再び《スティフェン・ブロー》をデイドの腹に喰らわせた。同時に、俺のカーソルがオレンジに染まる。
ダメージこそほぼ黙視できないほどに少ないが、デイドは数メートル近くブーツの跡を引きながらのけぞらせ再び長いスタン時間を課せられる。
そしてその目がダメージとは別の意味で見開かれる。
「…………ハッ!?」
数メートルのけぞらされた時点で、ようやくデイドも気づいたようだった。
そのすぐ背後には……さっきユミルが展開した、煌々と輝く回廊結晶の光柱があった。
再度歩きながら詰め寄った俺は、最後にと拳を握る。今度は拳のソードスキルではなく……怒りと、様々な気持ちが入り混じった握り拳。
ギュウウ、と音を立てながら振り絞る俺の拳の手袋と、背後の回廊結晶の光を交互に素早く見ていたデイドは狼狽する。
「や、やめろォ!!」
「……デイド、さっき俺がお前に言った言葉は、気を引く挑発でも何でもない」
俺は手の拳の握る力をさらに強める。
「お前が、もう少し周りのことを考えられたなら……」
振り絞った拳を前に突き出すべく、足を踏み締め……
「賛同してくれるような人が出来ていれば、こんなことにはならなかったんだ……! ――この、馬鹿野郎ッ……!!」
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