47:その勇姿と共に
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だ。
「ナメンじゃねぇ!!」
「!」
しかしデイドはそれだけでは終わらなかった。
彼も流石の培った技術や経験と反射神経で、俺が肉迫するよりも早く、腕のスナップを活かして槍を瞬時に袂へと引き戻したのだ。突き進む俺の前に向かって、再びあの蛇の牙が目の前へと待ち構えられる。これで柄を握る位置が変わりリーチこそ短くなるが、システム上でも問題なく攻撃を行える。
だが俺は駆ける足を止めない。そも、俺に向けられていたデイドの意識を一瞬でも逸れる機会を……今を、俺は待っていたのだ。足を止める理由など無い。なにより……ベリーが作ってくれたこのチャンスを、絶対に無駄にはしない。
「うぉぉぉおおおおっ!!」
俺は何も握られていない右手にグッと握り締めて力を込め、引き絞る。その拳がイエローに光り輝く。
――体術スキル零距離技《スティフェン・ブロー》。《エンブレイザー》と並ぶ、武器を必要としない、拳のソードスキル。
「ック、馬鹿がァッ!!」
対する、歯ぎしるデイドも刺突系ソードスキルを構え、その毒牙にも鋭い光が灯る。
「「うぉあああぁぁああっ!!」」
互いに引き絞った拳と矛先が衝突する。
叫び声こそ同じだったものの、衝突する前からデイドの顔には勝利が目に見えている笑みと肉切り歯が浮かんでいた。それもそのはずだ。刃と刃ならともかく、今、己の刃と衝突したのはソードスキルとはいえ、プレイヤーのただの握り拳だ。現実世界でもそうであるように、全てがデータで作られた仮想空間であっても結局は、鉄と鋼で出来た刃と、肉と骨で出来た拳。オブジェクト優先度の歴然とした差は見るに明かだ。デイドの目には現実世界で起こるであろう現象が今、目の前でも同じことが起こるだろうと確信されていることだろう。自分の蛇矛の刃が、俺の拳を切り裂くというその光景を……
しかし。
――バキィン!!
という直後に響いた破砕音が、デイドの予想をも砕き散らした。
そう――俺の拳が、デイドの矛先を粉々に打ち砕いていたのだ。
「な、なァンだとォォおおッ!?」
蛇矛の刃が飛び散る中、自信に満ちていたその金壺眼が驚愕に見開かれる。
反して俺は驚きなどはしなかった。俺がデイドに素手で挑んだのは、無謀でもなんでもない。こうなることを確信しての行動だった。
デイドの《蛇矛》はハーラインの《バッシュ・ミスティア》のように耐久値が劣る武器ではない。しかし……今の蛇矛には、ユミルが異常な握力で握り締めた時にできたヒビが、まるで蜘蛛の巣の如くに走っていたのだ。その時点で蛇矛の耐久値はほとんど限界まで消耗されたと確認できた。加えて俺の放った拳のソードスキル《スティフェン・ブロー》は、拳を鋼鉄のように硬化して殴る
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