47:その勇姿と共に
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た。
「システムにフレンド登録されなくたって……ボク達はもう、友達だよね……? ボク、この世界でも、現実世界でも……人の友達なんて、一人も出来なかった……。だから今、すごく……すごく嬉しいよ……。だから……だから、ボクをこんなに幸せにしてくれたキミに見届けて貰えたキミの大切な人も、きっととても幸せだったんだよ……。他でもない、ボクが保証する」
「ユミル……ユミルッ……!!」
いつかの時のように、今度も逆に俺がユミルに縋るように抱き締める。
それを見たユミルはクスリと、可笑しそうに、あるいは愛しそうに小さく笑った。
「じゃあ最後に、キリト……お願いしてもいい? ボクの、最後のお願い……」
「え……?」
「――――みちる」
ユミルは滑らかな発音で言った。
「――柚木、みちる。これが……ボクの本当の名前。それから……」
ユミルは現実世界の住所を口にした。
「その場所に、ボクのお母さんがいる……。キミ達がこのゲームから生還したら、伝えて欲しいんだ……。ボクは、この世界でも、強く生き抜いたって……!」
「ユミル……お前っ……」
そのユミルの力強い言葉に励まされて、俺もぐいっと腕の裾で涙を拭った。
「…………ああ……必ず、伝える……! いつかこのゲームを終わらせて、お前の勇姿を、必ず伝えるよ……!」
俺の言葉に続いて、アスナ達からも続いて頷きが返る。
するとユミルは安堵したかのように目を細めた。
「あぁ……ありがとう……。よかったぁ……これで、本当に、思い残すことはないや……」
ユミルは俺の頬に添えていた手を、真上……夜空へと向ける。その先にある、上弦の月へと。
「ボクはもう、ひとりぼっちじゃない……。これならきっと……お父さんも、ルビーも……笑顔でボクを迎えてくれる……」
ひょっとしたらその月のさらに向こうにある何かを、見据えているかのように言う。
その、どこまでも透き通るエメラルドグリーンの双眸で。
「――ねぇ、お父さん。ボク、この世界で、ちゃんと生き抜いたよ……。強く、強く……。だから、今、い――――」
その言葉が言い終わらない内に。
ポリゴンの破砕音と共に。
ユミルの体は、青く輝く無数の欠片となって宙へと散った。
俺の腕の中から一瞬にして残された僅かな存在感すらかき消えて。
「…………ユミ、ル。……ユミルっ……! ――――〜〜〜〜ッ!!!!」
しんと静まり返る夜の森の中、一際大きく彼の名を叫ぶ俺の声だけが響いた。
こうして。
小さな斧戦士、ユミルは…………俺達の前から、その勇姿と共に散っていったのだった。
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