47:その勇姿と共に
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では、ユミルはそのHPの約6割以上を消失させた。尋常でない防御値を誇っているにもかかわらずに、だ。
つまりそれはどういうことか。……もはや、答えは一つしかない。
…………それほどまでに、今のユミルの最大HP値は、残りわずかなのだ。たかだか三桁も無かったであろうダメージでも、それほどにバーが減少するまでに。
――以上の事を、半ば無意識に頭の隅で理解しつつも、今、俺の脳内を支配している感情は……
「……デイドッ、貴様ァッ!!」
怒り一色だった。この目の前の光景を見て浮かぶ感情は他にはありえなかった。
「なぜユミルを刺したッ!? もう敵意は明らかに無かったはずだ! それをお前は――」
「うるせぇっ!!」
俺の憤怒の言葉を、デイドはまだ端に泡が付着したままの口で叫んで遮った。その目の瞳孔は、さっきまでの凶行に相応しいまでの狂気に見開かれていていた。
「テメーもテメーだキリトッ! テメーこそ何してやがる!?」
「な、なにっ……?」
疑問の声を出すと、デイドは焦点が怪しいままの目で、槍で俺を指差した。
「テメーの目は節穴かよ!? オレはさっきも言ったはずだぜ!? そこのガキのカーソルをよく見ろ!」
一瞬だけ、彼はギロリと血走った目で地にうつ伏せのまま横たわるユミルを見下ろした。
「オレンジだぞ!? 犯罪者だ! それをテメーはなぜ庇ってやがる!?」
「それこそ俺も言ったはずだ! お前っ……今までの俺とユミルの話を聞いていなかったのか!? ユミルはもう、さっきまでの……死神だった彼とは違う! ようやくっ……その罪を償う決意を見せていたんだぞ!? 節穴の目をしてるのはどっちだ!」
「うるせぇよ!! この世界の犯罪者に、説得の余地なんざ無ェンだ!!」
彼は最早、まともに話を交わせる状態ではなかった。
「オレのカーソルはグリーン! コイツは犯罪者! どちらが正しいかなんざ、一目瞭然だろーがッ!」
「……………」
俺は、途中で言葉も出なくなっていた。
「…………デイド、お前……」
ただ……先程までの怒りから打って変わって侮蔑とも呆れとも違う、哀憫に近い感情が、俺の胸の内を取り巻き始めていた。
すると。
「なン、だよッ……その目はァッ!? ……クソがァッ……!」
デイドはギリリと歯ぎしりと共に、いかにも忌々しそうな顔で俺を睨み始めた。
「テメーも、そんな目でオレを見やがるのか、黒の剣士ッ……!」
その目には……悔しげな涙が。
「昔、初心者だった頃に居たギルドのバカ共も、同じ目をしてオレを追い出しやがったっ……! 何故だっ! どうしてなんだっ!?」
しわがれた大声が、しんしんと冷える夜
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